08


『……今日会えるメンバーにボーマンダとガブリアスがいると聞き、願わくば一戦交えたいと思っていた。だが相手はジムバッジを複数持つトレーナーの元にいるポケモンで、種族差も大きい。手加減されるのではと危惧していたんだ』
「じゃあ、わざと怒らせて本気にさせようとしたの?」
『……それも少しあるが、あとは……花見を楽しんでるお前たちを差し置いて勝負を申し込むのは、水を差すようで悪いと思ったんだ』


“ボーマンダにガブリアスがいると聞いて試しに来てみたが……期待しただけ無駄だったな”

“仲間となかよしこよし浮かれてる連中に用はない”


あれはもしや、そういう意味だったのか?そうか、それで反応を示した私たちを挑発させて……だとしても、言い過ぎな部分は否めないが。
晶の思惑を聞いたユイは小さく息を吐き、水色の額にデコピンを喰らわした。


『いてっ』
「誠士君と勇人君は、ちゃんと本気で戦いたいって言えば応じてくれるよ。今度は勝手に動くんじゃなくて、まずは私たちにちゃんと話してね。……珍しく反省してるみたいだからあまり強くは怒らないけど、みんなにちゃんと謝ること」
『……ああ。……非礼を詫びよう、すまなかった』
『い、いや……もう気にしてはいない』
『……こけし』


こけし? 突然呟いたワードに疑問を隠せない。


『お前はあまり表情が変わらない。マメ助にも似てるが……俗に言う“ぽーかーふぇいす”とでも言うべきか。おい、こけし』
「こ、こけし……」
「出た失礼なあだ名シリーズレイナたちバージョン」
『……な、なんだろうか』
『………………お前の技、見事だった。また一戦交えたい。あと、そこのトサカ頭2号も』
「それ俺ぇ!?」


どこがトサカだよ! トサカ頭とつるんでたのが印象的だったからな。お前たち案外そっくりだろう、頭の作りが。バカって言いてぇのかバカって! バカではなく髪型がトサカだろう。これはオールバックってんだ! おーるばっく。なにそれ知らねぇって顔してるな。


『……ふ、』


何故だろうか、勇人との会話を聞いていて不意に笑いが零れてしまった。それに勇人もつられて豪快に笑い、晶はしばらく呆然とするようにしていたが、少しだけ口元を緩めた。


(これはこれで、新たな友情と言うのだろうか)


その光景を眺めていたレイナたちも、上手くまとまったことにほっと胸をなでおろしたようだ。


「さー花見のお弁当を食べちゃおう! 焔に全部食べられちゃうよ!」
「おう! ひとっ飛びしたからまた腹減ったんだよな!」
「晶もお腹すいてるでしょ、食べよ?」
『……そう、だな』


ぎこちなく晶も花見会場に向かうレイナたちに続く。ああそうだ、私も一言言っておかなければ。晶の名を呼び、先程のバトルについて感想を述べる。


『お前の技も多彩で、私としてもこれからのバトルに参考になることが多かった。メスにも関わらず、押し負けるかと思った。凄まじい力だった』
『……は?』


ピタリ。晶の足が止まる。引き攣った顔をしたレイナがストップと私の口を塞ぎ、ユイが晶を宥めている。どうしたのだろうか。


「誠士。もしかしてだけど晶君のこと……」
『ああ、気になっていたんだが、何故レイナは彼女を晶“君”と呼んでいるんだ?』
「誠士ストップ! それ以上喋んないで!」
「俺でも分かったぜ、誠士……」
『?』

「あ、晶。その……ね? まずは落ち着いて深呼吸しよ!」
『…………ふ、』


ふざけるなこけしィィ!!!


一日で2回性別を間違われた晶の怒号が響き渡るまで、あと5秒。


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