07


「おいアンタら! ここは危険だ、逃げろ!」
(……?)


何かに焦った様子の幸矢の声が聞こえた。声のした方を向くと幸矢の目線の先にいたのは……レイナにユイだと!? 恐らく私たちがいなかったこととバトルで発生した衝撃音で来てしまったんだろう。だが今はタイミングが悪すぎる!
地形も歪み足元も不安定だ、もしもの事があれば……


『……っ、避けろ2人とも!』


不安は的中し、なんとか倒れることを耐えていた一本の大樹がミシミシと音を立てゆっくりと倒れこもうとしていた。傍にはレイナたちがいて、直撃してしまえば無事では済まない。大声を上げ逃げるよう伝えるが2人は足元に気を取られていて気付く様子はない。私の焦った様子に気づいた晶が目線を追う。そして目を見開いた。


『! 主!』


晶が声を張り上げたと同時に大樹は動きを止め、レイナたちの周りを不思議な色のシールドが覆う。

『レイナ、大丈夫!?』
『ご無事で何よりです、お二方』
「來夢! 緋翠君も!」


いつの間に来たのか、來夢がサイコキネシスで大樹の動きを制御し、緋翠がリフレクターで主人の周りを護る。そうか、テレポートで移動してきたのか。
ホッとしたのも束の間、私たちの頭上に影が生じる。上を見るとボーマンダが頭上を旋回していた。……誰か乗っているな。


『こんぐらいでいいか?』
「うん、OK。あの2人にお灸を据えてくる」
『俺にも当てんなよ!』


茶化す勇人の背中から飛び降りたのは碧雅だった。空中で原型に戻り、口から放たれるのはドラゴンタイプの天敵、こおりの最強技。威力を弱めたふぶきが私と晶に見事命中し、私たちは互いに戦闘不能になってしまった。


『君たち2人とも両成敗だよ』


地面に倒れた私が最後に見えたのはじしんとだいちのちからによってボロボロになってしまった地形を少しでも戻そうと焔と紅眞がかくとうタイプの技で整えているところだった。
こうして晶とのバトルは仲間たちの活躍によって幕を閉じたのであった。




「……はい、回復はおしまい。痛いところはあるかい、2人とも」
『……問題ない』
『右に同じく』


しばらく時間が経った後、意識が戻った私たちはみんなからの治療を受けていた。ちょうどナナカマド研究所も近かったので薬の類には困らなかったらしい。ナナカマド博士たちに事情を説明したレイナたちは、ここはトレーナーの自分たちに任せて欲しいと頼んだそうだ。
トゲピーの白恵からいやしのしずくも授かり、ほぼPCでの治療と同等なくらいにまで回復したと言っていいだろう。先に戻っているねと璃珀は白恵と共に花見会場へ戻って行った。今いるのは私と晶。そしてトレーナーの2人にお目付け役として勇人が残っている。


「じゃあ、回復したところで事情を聞くよ。……どうしてあんな事したの?」


腕を組み仁王立ちで立ち尽くすレイナは明らかに怒っている。私がしゃがんでいるから、余計にその姿は大きく見えた。それもそうだろうな、私もバトルに集中してしまっていたとはいえ、みんなを巻き込んでしまったから。


『……許せなかったんだ。仲間を蔑ろにされた気がして、ユイたちに対しての物言いも許せなかった』
「……そう。幸矢から事情は大体聞いてはいたけど、晶君は本当にそう思っていた訳じゃないと思うよ」
『ああ、それは私も感じた』


あの時、晶は明らかにユイを“主”と言い心配していた。本当に彼らとの付き合いを一時的なものだと気に留めていないならあんな顔はしない。ユイが晶に何故そのような物言いをしたのかと問い詰めると、晶は観念した子どものようにポツリと呟いた。


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