03
「あー疲れたー。あのままあの場所にいたらきっと今頃巻き込まれてたな、うん」
そうぶつぶつ言いながらお金を自販機に入れていく。
ガコンッガコンッと音を立ててみんなの分の飲み物を買ったことを確認して、元の場所に戻ろうとした竜牙はふと見覚えのある後ろ姿を見つけて思わず立ち止まった。
「あれって……ちょっと待って! そこの人!」
知り合いに似ているからと、初対面かもしれない人を呼び止めるだなんてことはきっとできる人はあまりいないだろう。
それが竜牙のいいところだ。
そんな竜牙の声に気づいて呼び止められた人は振り返った。
「……? え、竜牙君!」
「やっぱりレイナだったか。久しぶりだな!」
「レイナじゃないかもしれないのに話しかけるなんて、さすが竜牙だね!」
「お、おいおい……そんな褒めんなよ、焔。照れるだろ?」
えへへっと頬を掻きながら竜牙は照れたように笑った。
その光景は誰が見てもあざといと言ってしまう光景だ。
「いや、褒めてないだろう」
「竜牙君もお花見? ユイちゃんは?」
「ああ、みんな向こうで花見してるんだけど、ちょっと空気が危なくなってきたかもって俺の勘が騒ぎ出したから逃げてきた」
「空気が危ない? それってケンカってこと〜?」
「そうそう、ケンカの原因は……何だったかな……」
どこか遠い目をしている竜牙を、通りかかった人や周りの人は哀れみの目で見る人や目を合わせないようにそそくさと通り過ぎる人もいる。
「そ、そうなんだ。でも私、久しぶりにユイちゃんに会いたいな」
「うんうん! 幸夜や蒼陽にも会いたいな!」
「なら一緒に花見するか? レイナたちなら大歓迎するわ」
「行く行く〜! みんなといっぱいお話したい!」
「それじゃ行くか」
竜牙はさっきかった人数分のジュースを手に取り、今もケンカしてるだろう仲間を思い浮かべながらみんなの元にレイナたちと歩いて行った。
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