03


明日は私と笑理が大会に参加することもあって、今日は早めにお開きとなった。準備を手伝うため來夢と笑理を連れて部屋に戻ると、幸矢は図鑑を見ながら黙々と作業を進めていた。すご、あの短時間でほとんど終わってない!?ただの布だったそれはあるポケモンの皮のように形を形成していた。


「笑理、試しに原型に戻って着てみてくれ。サイズと着心地の確認がしたい」
「わぁ……! 凄い可愛い!」
「笑理、着てみたら?」


原型に戻った笑理が衣装を身に纏う。クルクルと回って一回転。うん、身内贔屓で見なくても可愛い!


『すごーい! バッチリだよ!』
「……よし、あとは細かな部分の仕上げだな」
「流石に疲れたでしょ。私にも出来そうな部分があったら手伝うよ」
「アンタにできるのか?」


ジトと疑うような目を向けられる。確かに、お菓子作りならそれなりに自信があるけど、裁縫となると……。


『幸矢、あたしにやらせて!』


笑理が幸矢に力強い目で訴えた。


『あたしが参加したいって言い出したんだし、幸矢に全部任せ切りなんて無責任なことしたくないよ。あたしも裁縫得意じゃないけど……』
「…………」


幸矢は黙って笑理を見つめていたかと思うと、「お前の得意とするものはなんだ」と笑理に問いかけた。


『えっ?』
「お前は人前に出ることを厭わない。着飾ることを好み、自分の雰囲気に合うよう上手く組み合わせることが出来る。俺はそういった事に長けているとは言えない。今もそれぞれの得意分野を活かしているだけだ」


幸矢が珍しく沢山喋ってる……! 若干失礼なことを思ってしまったけど、笑理はコンテストや今回のなりきり大会みたいな華やかな舞台に出て、人前で披露することが得意……というか好きで、幸矢は元々手先が器用だから今回のような衣装作りが得意で……要は気にするなって言ってるってこと? 相変わらず言葉が足りないけど、彼なりに笑理を案じていることはわかる。


「だが、どうしてもやりたいと言うなら指にケガをしない程度にな。難しい箇所は俺がやる」
『……うん! 頑張る!』
(ここは2人に任せた方がいいかも……あ、)


そうだ! と頭に電球が浮かび來夢と共にキッチンへ。私は私なりに得意分野で2人を支えよう。來夢にも手伝ってもらってあるものを作る。


「レイナ、形はこれでいい?」
「うん。これで焼きあげよう」


しばらく経って出来上がったのはスコーン。これなら片手で食べられるし、ブリーのみとモモンのみの合わせジャムを付けてもらって糖分も取れる。ブリーのみは元いた世界だとブルーベリーに該当するみたいで、きっと目にも良いはずだ。
早速出来たてを差し入れると幸矢はともかく、笑理がとても嬉しそうに頬張ってくれて、良かったと笑みが零れた。來夢にもお疲れ様と特別にチョコチップ入りのスコーンをあげる。


「「…………」」
「……あーもー! 今日は特別! ただし1個だけね」


ドアの隙間から羨ましそうにこちらを覗く食べ盛りの2人にも分けることになり、片付けを終えて戻ってきた誠士も交えて結局みんなで夜遅いおやつの時間になってしまった。
けど、たまにはこういうのもいいかもしれない。


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