05


プラターヌ博士の声で雰囲気は再び緊迫したものへ。互いに今はイーブン。お互いボールを持ち、フィールドへ高く投げ上げる。


「白刃、Saisir la victoire!」
「お願い、紅眞!」
『白刃か〜、よろしくな!』
『姫のご期待に沿うために、全力で戦わせてもらうぞ紅眞』


…………来た。恐らく今回のバトルで一番の鬼門は紅眞君だ。ワカシャモの紅眞君は私の手持ちのほとんどに弱点を突くことが出来る。ニャスパーの蒼真かオンバットの龍矢が相性が良いけど、この後に控えている碧雅君はシャドーボールを覚えている。更にこおりタイプだし龍矢とも相性が悪い。メガシンカで能力を増し、みずのはどうを覚えている白刃で挑むことにした。
『フユカも、よろしくなー!』とにかっと笑う紅眞君だがユイの仲間の中ではバトルに対する情熱は高い。息を吐き、開いた次の瞬間彼の目は熱く燃えていた。
いつの間にかごくりと唾を飲んでいた。白刃が落ち着かせるように私に声を投げかける。


『姫、ご安心ください。必ずや貴女に勝利を捧げましょう』
「勿論頑張ろう!白刃、つじぎり!」
「紅眞、ひのこ!」


小さな火の玉をものともせず白刃は紅眞君に真っ直ぐ攻め上がっていく。にどげりで相殺しようとしたが元の威力はつじぎりの方が高いからか、紅眞君は力負けして技を食らってしまった。こちらが有利なように見えるけど、彼の本領はここからだ。


「ほのおのうず!白刃君を囲って動きを制限するよ!」
『おう!』
「白刃、よく見て。スピードなら白刃も負けてないよ」
『承知』


とは言ったものの、やっぱり特性“かそく”はチートだと思う。時間が経つ事に速さが増してくんだもん。白刃は追えても私が追えない。紅眞君は得意のスピードを惜しげも無く発揮し私達を翻弄しながら空中でほのおのうずを放った。白刃は炎の檻に閉じ込められてしまう。


「そろそろ潮時でしょうか」
「どちらも応援したくなりますね」
「……雅さんの読みが当たったね。フユカさんを見てご覧」

「白刃、行くよ!」
『……!はい』
「紅眞、アレが来るよ」
『よっしゃ。それ待ってたんだ!ギガシンカ!』
「なんで嬉しそうにしてるの!?警戒してね!?あとギガシンカじゃなくてメガシンカ!」


観客側とユイたちの会話をBGMに、声を高々にあげてメガストーンが光り出す。炎に囲まれて虹色に輝く光が解けた先には、メガシンカした白刃が立っていた。みずのはどうでほのおのうずを打ち消し、凛とした佇まいで紅眞君と向き合った。


『おぉー。やっぱかっけぇなそれ!俺もメガシンカしてみてぇなー』
『バシャーモに進化すれば可能だそうだ。お前の場合はまずは進化することからだな』
『なるほどな!んじゃ、まずはお前に勝ってからだ』
『……よく言う。俺も姫のため、この勝負勝たせてもらう』
「白刃、みずのはどう!」
「避けてにどげり!」


みずのはどうを連投するがやはり更に素早くなった紅眞君には避けられる。白刃の真下に滑り込むようにスライディングした紅眞君がにどげりを繰り出し白刃が浮いた。かそくで勢いを増したにどげりはメガシンカで能力が上がってるとはいえ白刃にもダメージは大きい。でもタダで転びはしない。確実に当てられる距離でみずのはどうが直撃だ。膝を着いたけど彼の闘志はまだ燃えている。


「紅眞、この前覚えたやついくよ!ブレイズキック!」
「つじぎりで迎え撃つ!」


炎を纏った蹴りと黒い斬撃がぶつかる。砂埃が舞い互いに技の衝撃でそれぞれの主人の前まで下がっていた。白刃も紅眞君も体力は少なくなっているようで息が上がっている。
……これは、次の攻撃で決着がつきそう。ユイはもう一度ブレイズキックを繰り出した。それならこっちは!


「みずのはどうを口の前で溜め込んで!」
『!?……分かりました』


紅眞君の速さには敵わない。けどこちらに接近して技を打ち込みに来るのなら、その瞬間を狙えばいい。タイミングを見て……来た!


「発射!」
『うおっ!?』
「紅眞!」


よし、狙い通り!速さは長所であり短所でもある。素早く動き相手を翻弄できる分、視界は動体視力が低下してぼやけているはずだ。白刃の真ん前に現れた紅眞君はみずのはどうがあることに気づかずに動揺し、技は命中した。爆発音と共に水の蒸発した白い湯気がたちこめ、煙が晴れると紅眞君は倒れていた。


「……いやぁ、これは手に汗握るバトルだったね」


プラターヌ博士の感嘆の声が静かに響いた。やった、白刃!と思ったのも束の間、白刃はメガシンカが解けその場に足を崩し倒れ込んだ。互いに駆け寄り仲間の無事を確認する。


『申し訳ありません……姫。最後に技をにどげりに変えられ避けることが出来ませんでした』
「ううん、よくやったよ。ありがとう」
『っかぁー!やっぱみず技って冷たいし寒いし俺無理ー!』
「紅眞もお疲れ様。かっこよかったよ」
「両者戦闘不能。ということで引き分けだね」


これで残りは1体。ユイは勿論、私が誰を繰り出すのか皆わかってるよね。白刃達が観客側に向かったのを確認し最後のボールを投げる。グレイシアとジュプトルが現れ、青と緑の相棒バトルだ。


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