07


「それよりお腹すいたね、何か食べたいものはあるかい?」
「……卵焼きと、おにぎり」
「分かったよ」


そう言い來夢ちゃんと自分の分のご飯を取ってきた。ついでにデザートのアイスと、恐らくレイナお手製のポフィンも。レイナが横で「流石いつくしみポケモン……」と呟いていたけど、“いつくしみ”ってどんな意味だっけ、後で調べておこう。
來夢ちゃんも勇気を振り絞ったのか、顔が少し赤かったけど一瞬顔を上げ、璃珀の目を見ながら「ありがとう!」とお礼を言った。


「うん、よく出来ました來夢ちゃん」


璃珀はまた、紅眞とは違うベクトルのコミュ力の持ち主だなぁ。すると今度は笑理ちゃんと幸矢君が近付いてくる。どうやらハンカチが完成したみたいで、笑顔でレイナにそれをプレゼントした。白いハンカチに刺繍とアップリケが施された、この世でただ一つの物だ。


「わっ……可愛い! 笑理ありがとう!」
「えへへ、レイナをイメージして幸矢に手伝ってもらったんだ」
「幸矢も、ありがとうね!」
「別に、頼まれたからやっただけだ。……そうだ、アンタに渡しておきたい物がある」
「へ? 私?」


幸矢君に渡されたものは片手で収まるくらい小さくて可愛い、デフォルメされたピカチュウのぬいぐるみだった。え、ほんとにぬいぐるみ作っちゃってるじゃん。ていうかこんなクールでかっこいい顔しながらこんな可愛いもの作っちゃうギャップヤバくない?


「コトブキシティでは悪かった。詫びの品としては物足りないだろうが……気に入らなかったら捨ててくれて構わない」
「滅相も無い! 超可愛いよ! ありがとう幸矢君!」


寧ろ返せと言われても返しませんとも!
幸矢君は「ただ材料が余っていただけだ」と言っていたけど、だとしてもここまでのクオリティで作れるのはすごい才能だと思う。
チェーンも着いているからバッグにでも付けようかなと考えていると紅眞達がぬいぐるみを見て目を輝かせながら幸矢君に次々と話しかけていく。


「へー! お前すげぇじゃん! なぁ今度はアチャモとか作ってくれよ!」
「それなら僕も! ヒコザルがいいな!」
「あーっずるい! あたしもパチリスのぬいぐるみ欲しい!」
「タツベイも意外に可愛いんだからな!」
「君は一体何の対決してるの」
「……気が向いたらな」


そう言い幸矢君は早足で去ってしまった。あれ、気を悪くしちゃったかな? レイナはその光景を見てクスクス笑っていて、幸矢君のアレは照れているらしいとの事だった。今頃耳赤くしてるよと言われその光景を想像する。……か、可愛いな、それ。


「えっ……! そうなの?」
「ふふ、驚いたかな?」
「驚いたけど……素敵、だと思う」
(何やら來夢ちゃんの視線を感じる)


両手で口元を覆いながらこちらをキラキラした目で見つめてくる來夢ちゃん。頬は手で隠れているけどほのかに赤くなってるような……ま、まさか。


「璃珀! いたいけで可愛い來夢ちゃんに一体何を!?」
「何もしてないよ。ただ少し話をしていただけさ、ねえ?」
「うん。聞いていてすごく楽しかった」
「そ、そう? ならいいんだけど」


何やら二人で内緒話か。ていうか仲良くなるの早いね?
あの後勇人君と紅眞のサイコソーダ一気飲み対決だったり、焔君の早食いタイムアタックだったり、以前のコンテストで披露してくれた演技の再演だったりと、とても楽しい時間を過ごした。

そうこうしているうちに気づけば時刻は夕方になりピクニックの終わりを告げる。片付けもそこそこにお互い次の目的地のための旅が再開する。とは言ってもレイナは今日コトブキシティに泊まるんだけどね。


「今日は飛び入りで参加しちゃってごめんね、でも楽しかった!」
「私も! また今度電話して会おう!」


お互い握手を交わし、私は次の街への道を歩き出す。レイナの新しい仲間の幸矢君のくれたぬいぐるみを早速バッグに付けた。
歩く度に揺れ、夕陽に当てられ輝くその色は、彼の陽だまりの髪色と同じ色をしていた。


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