06


色んな声の乾杯の声が返ってきた。まるで宴会みたい。各々好きな物を食べたり、飲んだり、話をしたり、好きな時間を過ごしている。勇人君はタツベイからコモルーに進化したみたいで、髪の色が変わって背も少し伸びていた。でも元気で大食いなところは変わらないのが彼らしいな。


「勇人も進化したんだなー、おめっと!」
「おう! 進化したおかげでまた別の課題ができちまったけど……レイナ達と一緒に乗り越えていくさ! つーか俺、お前ともバトルしてぇな」
「あ、僕も気になってたんだ。同じほのお・かくとうタイプだし、いい経験になりそう」
「お前らそんだけ食って動けるのかよ」
「え? まだ腹3分目くらいだけど」
「カビゴン顔負けの食べっぷりだね、底が知りたくなってくるなぁ」
「よく食べよく動きよくバトルする、これが強くなる秘訣だぜ!」
「誠士、お前よくこんだけの量毎日作れるよな〜。俺、お前が一番の苦労人だと思うわ」
「確かに、私たちの仲間ではここまで平らげる方はいませんからね」
「これだけ2人が食べてくれるからな、私としても作り甲斐がある」
「その前に食費が凄そうだけど」
「おい無視すんなよ!」


うーん賑やかだ。私もレイナと話をしていると、ふと來夢ちゃんがみんなと離れた距離にいることに気づいた。何かしようと手を伸ばすけど、諦めたように戻して。視線の先は……璃珀? さっきも乾杯前に幸矢君と一緒に軽く紹介したけど、どうしたのかな。


「來夢は人見知りだから、まだ璃珀君と馴染めてないのかもね」
「そう、なんだ……」


確かに來夢ちゃん、いつも笑理ちゃんと一緒だし一人でいるところをあまり見たことがない。今笑理ちゃんは幸矢君とのハンカチ作りに集中していて、みんなも会話に夢中で來夢ちゃんがいないことに気づいていないようだった。
すると焔君の大食いっぷりを面白そうに見ていた璃珀が席を立ち、來夢ちゃんのほうへ近寄っていった。來夢ちゃんの目線と同じになるように屈んで、優しく話しかける。


「きみは確か、ランクルスの來夢ちゃんだったかな。こんなところでどうしたんだい」
「えっと…………っ」


なんとか話そうとするけれど、上手く言葉が出てこないのか俯いてしまった來夢ちゃん。レイナと顔を見合わせてみたけどここは一旦、様子を見てみようということになった。璃珀は來夢ちゃんをしばらく見つめたかと思うと、いつも首元に着けているしんぴのしずくを手に取り、來夢ちゃんに見せる。


「來夢ちゃん。これが見えるかい」
「……う、うん」
「もし誰かの顔を見て話すのが怖かったり、緊張するようなら首元を見て話すといいよ。慣れてきたら少しずつ、目を見れるようになるといい。きみはエスパータイプだから、他のポケモンよりも心の機微に敏感だろうしね」
「……ごめんなさい。私、どう話したらいいかわからなくて。上手く話せないと目を見るのも怖くて、でもあなたが怖いわけじゃないの。ただ……」
「慣れない相手だと気を使うからね。無理をしないで、來夢ちゃんのペースでゆっくり心を開いてくれたら嬉しいな」


泣きそうだった來夢ちゃんの表情が落ち着き、少しだけ顔が上がった。


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