03

「どこやっちゃったんだろ……」
「心当たりのある箇所は探したんだがな……。幸矢もそろそろ戻るだろうし、そこからまたどうするか決めよう」
「うん。……レイナに、あげたかったのにな」


ラリアットから解放され交番に向かっている途中、テレビコトブキ前の噴水広場で聞き覚えのある声が聞こえてきた。声のするほうを見ると紙袋を大事に抱えて悲しい表情をする笑理ちゃんと、買い物帰りらしい袋を持った誠士君がいた。自然と足が止まった私に気づいた碧雅も視線を辿り2人の存在に気付いたようだ。困ってるみたいだけど、何かあったのかな。


「笑理ちゃん! 誠士君!」
「え、この声……ユイ? 碧雅も?」
「どうも、奇遇だね」
「ああ。2人とも元気そうで何よりだ」
「そっちもね! ……笑理ちゃん、何かあったの?」
「うん。実は、落し物しちゃって」


いつも明るくてハキハキした笑理ちゃんの笑顔が今は無理して笑っているように見える。どんなものを落としたのか聞くとアップリケらしくて……ってもしかして。先程拾ったアップリケを見せると「これ! これだよ!」と嬉しそうにそれを手に取った。わあ、なんというミラクル。


「ユイありがとう!」
「どういたしまして。ジュンサーさんに届ける前で良かった!」
「……君って裁縫やってたっけ、記憶に無いけど」
「やってないよ。幸矢に教えてもらいながら、ハンカチを作ろうと思って」
「ゆきや?」


そういえば、さっきもその名前を聞いたような。


「ああ、ユイ達は会うのは初めてだったか」


そう誠士君が言うのとオレンジの髪をしたポニーテールの男の子がやって来たのはほぼ同時だったように思う。少し癖の残る一束のポニーテールが風に靡くが、息一つ乱れてなかったのは彼がポケモンだということの顕れだった。


「悪いな、遅くなった。……ところでアンタら、誰だ?」


彼の視線の先は私と碧雅。比較的距離の近い私の肩を掴み睨みつけるようにこちらを見やる。この人が幸矢君がなのかな? 碧雅がポニーテール君を冷たく睨んでいるけど、見知らぬ人にそんな目向けちゃいけないよ。誠士君が彼の手を掴み止めに入る。


「幸矢、彼女はレイナの友人だ」
「友人? ……そういえば、そんなことを話していた気もするな」
「え、そうなの?」


なんて話してたのかちょっと気になる。幸矢君は私に悪かったと謝罪し手を離してくれた。そして何事も無かったかのように誠士君に状況を伺う。クールだ、誠士君に次ぐ新たなクール系イケメンだ。碧雅もレイナの仲間だと分かったからか、「ふーん」とひとまず納得したようだ。


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