05


『遅いなぁ、ユイ達』
「女性は支度に時間がかかると言うからな」
「おい白刃、何やってんだ?」
「姫にカメラを任されたのだ。姫の美しい浴衣姿を、このカメラのフィルム全てに収めてみせる……!」
「んな事したらフユカに怒られるぞお前」
「一時的に荷物を持って欲しかっただけでしょ」
「だぁぁあ! 俺は腹が減った! 屋台の飯が食いてぇ!」
「……勇人は完全に色気より食い気だな」
「僕も、そろそろお腹が……」
「そういえば、ポケマメなるものを買ってみました。良かったらいかがでしょうか、皆様」
「……美味しそう……」
『僕この水色のやつ! いっただきまーす!』
「ほぉ、アローラにはこういう食べ物があるんだな」
「おいひー」
「うめぇ!」
「そこの大食いコンビ、量は加減してよね。來夢達がまだ食べてないから少し取っておいて……」
「「あ」」
「……すまない。2人には私から言っておく」


……あ、みんないた。何やらまた騒いでるけど大丈夫かな?


「皆さん、お待たせしました」
『わぁ〜、みんな綺麗だね!』


悠冬君の素直な感想が今はチクチクくる。は、恥ずかしい。


「浴衣は雅が、髪型は笑理ちゃんがセットしてくれたんだよね」
「うん、とっても楽しかった!」
「ありがとうね、笑理」
「來夢に笑理、2人とも同じ浴衣なんだね。お揃いかぁ〜」
「女ってやつはなんでこんなのが好きなんだ? 俺には理解できねぇ」

『フユカと雅も、いつもよりキラキラしてて綺麗だね!』
「ありがとう悠冬。たまにはこういうのも悪くないですわね」
「……フユカは、ラプラス……?」
「お、蒼真当たり! ところで白刃、なんで手で顔を覆ってるの?」
「……姫の浴衣姿があまりに眩しく、私には直視できません……!」
「……と、とりあえずカメラ貸して! レイナ達の写真撮りたいから!
後で皆も撮るよー!」

「おー! おおー!! ユイも可愛いじゃん!」
「ひい紅眞」
「なんで逃げるんだよ」
「マスター、お似合いですよ?」


いやいやいや、いや! いざ着てみたけど、やっぱ似合ってないって!
レイナやフユカは元々綺麗な顔してるし、來夢ちゃん達も可愛いからともかく、私はアカンって。
レイナはイッシュ地方にいるというもふもふしたエルフーンっていうポケモンの柄で、フユカはラプラス柄。
恐らく水恋さんの影響が大きいんだろうなと内心思ってる。
來夢ちゃんと笑理ちゃんはさっきも言ってた通りプラスルとマイナン。髪型もお揃いにしてるのが尚のこと二人の仲の良さを引き立てている。
雅ちゃんは元々着物を着ているけど、今日はいつもと違うビビヨンの羽の模様の柄を選んだみたい。
なんだっけ、はなぞのの模様だったかな。

まぁとにかく、そんな綺麗可愛い子ちゃん達の中に私みたいな普通の子が混ざるのはねぇ。


「……」
「…………」


追いかけてくる紅眞達から逃げているところで、面白いのが見れた。
わー誠士君と緑炎さん、2人を見て固まってるよ。誠士君に至っては顔真っ赤だし、うんうんでもその気持ちわかるよ。
固まってるふたりを見つけたレイナ達が駆け寄ってきた。


「あ、誠士! どう? 変かな?」
「……あ、あぁ……に、似合ってると……お、もう」
「だんだん声がちっちゃくなってきてるんだけど?」
「緑炎もここにいたんだ! 水姉さんが頭によぎって、ラプラスにしてみたんだよね」
「そうか。まあ、いいんじゃねぇのか……」
「じゃあこっちを見て言いなよ」


ヤバいどうしよう、すごく楽しい。ニマニマが止まらない。
あ、白刃君が緑炎さんに対抗意識抱いてる。


「なに気持ち悪い顔してるの」
「…………う、」


このまま野次馬を続けようと思ったら不意に声をかけられた。しかも一番見られたくなかった奴ナンバーワン!
一人姿が見えないと思ったらジェラートを買いに行ってたのね、しかもトリプル。
けどラッキーだったかも、アイスに夢中なら適当なこと言ってずらかれる。


「あ! そろそろ花火始まる頃だろうし、私場所取りに行ってくるね」
「ユイさ、」


くそぅなんで話しかけてくるんだこんな時に限って。


「今日メイクしてるんだね」
「何故バレた」


そう、折角浴衣を着るんだしと軽くだけどメイクをみんなでしてみたのだ。
と言っても本当に軽くなんだけどね。でもいつもより目元はパッチリしてるんじゃないかな。


「ふーん…………そっか」
「何その間」


まあいつもと違って毒舌を吐かれることが無かっただけいいか!
勇人君達が屋台のご飯を求めにフラフラさまよい始めたので、慌ててレイナ達が私を呼ぶ声が聞こえる。
あ、行かないと。アイスを食べて機嫌も悪くないので良いだろうと判断した私は碧雅の腕を引っ張りみんなの方に向かっていった。


大きな音をたてて夜空に咲く大輪の花。
空気が綺麗だからかアローラの空は星が良く見えて、より一層花火が輝いている。
みんな花火を夢中で見ていて、ああここに来れてよかったと心から思う。


「たーまやー!」
「レイナ、なにそれ?」
「花火の掛け声だよ。ちょっと雰囲気あるでしょ」
「たーまやー! ……うん、楽しい!」


モンスターボール、ピカチュウ、ニャース……色んな形の花火が上がっている。


「パチリスみーつけた!」
「……ニャスパー、あった……」
『アマルスもある!』
「やっぱり可愛い系のポケモンの花火が多いんだね」


この旅行も今日でおしまい。
明日は帰るだけで、レイナとフユカ達ともまたお別れだ。
物足りないし寂しくもあるけど、たまに会えるからこそこういう日の思い出はより残ると思うから。
ふと両腕に違和感。見ると二人がそれぞれ私の片手を腕で組んでいる。


「また行こうね、ユイ!」
「今度はナオトとアレックスさんや皆で!」
「……うん!」


そして私たちは手を繋ぎながら空を見上げ、こう叫ぶのだ。


「「「またね、アローラ!」」」


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