01

それは、ある夜かかってきた一本の電話から始まった。


《やっほーユイ!この前はありがとうね!》
「フユカ!?」


とある街で一泊中、ジョーイさんに「お電話が入ってますよ」と伝えられモニターを開くと、こちらに嬉しそうに手を振るこの世界での数少ない友達の一人、フユカが映りこんだ。
後ろではフユカの仲間達が人型を取り各々自由に時間を過ごしている。
横から《こんばんは、ユイちゃん》とアレックスさんも顔を出したので、どうやらプラターヌ研究所から連絡をとっているようだ。

何故ここに泊まってると分かったのか疑問を抱いたけどそういえば、この前カロスに遊びに行った時にこれからの予定を大まかに共有し合ったのを思い出した。


《突然連絡してごめんね。ねえ、ユイはアローラ地方って知ってる?》
「あろーら?」
《南にある島国でね。とても自然豊かで有名な観光地なんだ》


聞き慣れない地名に首を傾げるがアレックスさんが大まかに教えてくれた。
南、島国、観光地。そのキーワードを聞いて思い浮かぶのは元の世界に存在したハワイ諸島。
ああそういえば、なんだかんだ一度も行けてなかったなぁと少し寂しい気持ちを抱きつつ、フユカ達の話の続きを聞いた。

どうやらプラターヌ博士の知人がアローラ地方の旅行券を当てたけれども、生憎その日は予定が既に入っていたらしい。
でも使わないのは勿体ないし、折角ならとプラターヌ博士に譲られたんだとか。
ただプラターヌ博士も研究が忙しいので旅行をしている余裕はなく、アレックスさんもその手伝いに追われる身。
どうしようか悩んでいたところに丁度研究所に来ていたフユカに白羽の矢が立ったのだ。


《この前のお礼も兼ねて、どうかな? と思って。行く?》
「行く行くー! もっちろん!」
《決まり! ちなみにレイナにも声かけて、即答で行くって返事だった!》


ただナオトは今回予定が合わなかったみたい。

その言葉を聞いて「そっかぁ……」と残念な気持ちを吐露した。
でも同じシンオウを旅してるならまたどこかで出会えるはずだし、機会はいくらでもある。
そう気持ちを切り替えることにした。


《詳しい日程についてはまた後日知らせるよ。皆で楽しんでおいで》
《それじゃユイ、またね!》
「2人ともありがとう! それじゃあ!」


プツンと電源を落とした後、傍で紅茶を用意してくれていた緋翠にいてもたってもいられず嬉しい気持ちをぶつけた。
一瞬驚いた様子だったが、私の嬉しい気持ちをキャッチしたのか穏やかに微笑んでくれた。


「アローラってどんなところなんだろうね?」
「4つの島から構成される地方だと聞いたことがあります。恐らく、一番観光地として有名なメレメレ島に行くのではないでしょうか」
「めれめれ……? アローラ地方に行く前に少し調べておこうかな」
「私で良ければお手伝い致しますよ、マスター」


そう申し出る緋翠にありがとうと伝え、パソコンで簡単に検索してみる。
すると、あるサイトにとても興味深い情報があるのを発見した。


(これ……! 絶対みんなで行きたい!)
「どうされました? ……わぁ、これはいい思い出になりそうですね」
「うん! そうだね!」


まだ行ったことのない新たな世界に胸を躍らせ、当日を楽しみに待った。


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