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宝探し某日。南1番エリアの高い丘にてパルデア地方の広大な自然を堪能していると、スマホロトムが「ロトロトロト……」とあの特徴的な音を発し、着信を伝えてくれる。電話に出ると聞こえてきたのは穏やかな老齢の男性の声──相手はクラベル校長からだった。息災である旨を伝え挨拶を交わし、本題に入る。


《本日あなたに連絡をしたのは他でもありません。我がグレープアカデミーに見学に来た他所の地方のお客様を案内してほしいのです》
「わ、私がですか……!?ネモの方が適任では、」
《ネモさんは残念ながら宝探しに夢中で、現在学園にはいらっしゃらないのです》


あぁ……。確かに彼女の性分を考えると、今も広いこのパルデアのどこかで、野生のポケモンかトレーナーと戦っているのかもしれない。彼女は本当にポケモンバトルが好きみたいだから。
生徒会長であるネモが不在、他の生徒も宝探しでテーブルシティ近辺にはいない。どうしたものかと頭を悩ませたところで私の存在を思い出し、コンタクトを取ったという訳か。


《そのお客様もシオンさんと同い年くらいの女性なのです。気立ての良い子ですから、きっと仲良くなれると思いますよ》
「そう、なのですか……。分かりました、私でお力になれるのでしたら」
《それは良かった。ではシオンさん、グレープアカデミーでお待ちしておりますね》


そう言い残しクラベル校長は通話を終えた。会話を聞いていた若葉がボールから飛び出してきて、芝生の上で伸びをする。ネコ特有の愛らしい仕草に思わず笑みがこぼれた。


『シオン、アカデミーに戻るの?』


太陽にお腹を向け、仰向けになりながら若葉が尋ねる。何故かミライドンも真似をするようにボールから出てきて、2人揃って日浴びをしていた。若葉のふさふさのお腹をぽふぽふと撫でると、体全体をお餅のようにのびーと伸ばした。


「えぇ。どうやら他所の地方からいらした方を案内することになったの」
『それはいいが、何時なんだそれは?』
「…………えっ、?」


そういえば、具体的な日取りは提示されなかった。そのお客様もいつ来るのかを言っていなかったし…………ま、まさか。


「もしかして、“今”なの!?」


私はてっきり、後日なのだとばかり!でもあの言い方だとたしかに、“現在”と捉えてもあながち間違いではない。とにかく、一度アカデミーに戻らないと。


『わぁ〜、いっそげ〜!』
『楽しそうにしてる場合じゃないぞ、若葉』
『他の地方から来た人かー。ならオレはボールで大人しくしてようかな。あまり人目に付かない方がいいと思うし』
「そう、ね。ミライドンは今回ボールの中にいてもらおうかな」


空飛ぶタクシーに急いで連絡を取り、足早にアカデミーに向かうのだった。



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