02


「戻ったかレイナ……客人か?」


レイナちゃん達に案内され通された部屋に入ると、良い香りと共にキッチンから男の人が顔を出した。

い、イケメンさんだ!


「誠士ただいま。

笑理達がお世話になったんだって、お昼足りるかな?」

「問題ないだろう。焔が食べるからいつも多めに作るしな」

「なら俺も手伝うぜ! 世話になりっぱなしなのも悪いしよ」


紅眞が名乗り出る。

誠士君は「すまないな、感謝する」と小さく微笑み紅眞と一緒にキッチンで作業を再開した。


「かっこいい人だねぇ。料理もできるなんてすごい」

「誠士は寡黙だけど、優しいしすごく強いんだよ。ちなみに種族はフカマル」

「そうなんだ! うちの紅眞はアチャモっていうんだ。

コトブキで出会ったんだけど、真っ直ぐな子なんだよ」

「うん、そんな感じする!」

「紹介が遅れたけど、ボールの中で休んでいるグレイシアがパートナーの碧雅。

さっきも出てきたんだけど、ミックスオレ飲み終わったらまた戻っちゃったんだ」

「こおりタイプには今日の天気はちょっと辛いのかもね、よろしくね碧雅君」

『……どうも』


ちょ、全くこの子には困ったものだ。

多分ご飯になってアイスをあげれば回復すると思うんだけどね!

ごめんねと謝ればレイナちゃんは気にしてないよと言ってくれた。

そのまま來夢ちゃんと笑理ちゃんも交えて4人でガールズトークをしていると、ドアが開き1人の男の子とその腕に抱かれた1匹のポケモンが入ってきた。


「ただいま〜お腹空いた〜」

「おかえり焔、勇人」

『おうっ! 戻ったぜ! 

……誰だ、コイツら?』


小さな手足と一回りほど大きな頭部が特徴的な、どことなくヒョウタさんのズガイドスを彷彿とさせるポケモン。

右手を挙げて話すその様は気さくさを感じさせた。

タツベイの勇人君と赤髪の男の子は焔君だと紹介してもらった。

すごいなあ、5匹もポケモンがいるなんて。なんか大家族って感じ。

勇人君はバトルが大好きらしく、今日は焔君と一緒に戦ってきたらしい。なんだか紅眞と気が合いそうな予感。

焔君は話の節々から言われていたように食べ盛りの食いしん坊みたいで、キッチンを気にしてソワソワしていた。

つまみ食いをしようとしないだけ良い子だと思う。

そうして皆で話をしながら待っていると、待たせたなと誠士君達が料理を運んできた。

お、美味しそうだ!


「紅眞が手伝ってくれたおかげで、かなり助かった」

「へへ、俺も楽しかったぜ。ありがとうな、誠士兄ちゃん!」

「ほら碧雅、アイスもあるよー」

『ふぁ……』


欠伸をしながら出てきた碧雅。そのまま人型になり、まず先にアイスを食べた。

アイスは碧雅の動力源と本人談だったけどあながち嘘ではないのかもしれない。

目に活気が戻ってきてる気がする。


『! お前強そうな気配がするな……なあなあ! 後で俺とバトルしようぜ』

「え、やだけど」

『んなっ! お前それでもポケモンかー!』

「煩いよ、それに僕らは絶対戦わないといけないわけじゃないでしょ」

「まあまあ碧雅、受けてあげたら?」

「……仕方ないな、今日みたいな日じゃなかったらいいよ。すぐに終わらせてやるけど」


意外に君も好戦的だよね。戦って己を高めようとするのはポケモンの本能なのかな。


『へへっ、そうこなくっちゃな! 相手が強い方がより燃えるってもんよ!』

「はいはい勇人、まずはご飯ね」


焔に全部食べられるよ、と言う笑理ちゃん。

テーブルを見れば既に空のお皿が数枚。焔君のお腹はブラックホールなのか!?


「これ美味しい〜! 2人が作ってくれたからいつもよりもっと美味しく感じるよ、いくらでも食べられちゃうな」

「洒落にならないから怖いよ!」

「もーいただきますも言ってないのに……」

「だが、こんな日も悪くないな」


確かに、ここまで大人数との食事はこの世界に来て初めての経験だ。

十人十色とは言ったもので、みんなそれぞれ違った個性があって、この数時間はとても楽しかった。

ご飯中も会話が弾まないことはなく、とても素敵なランチタイムを過ごさせてもらった。


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