04


「──はい、こちらになりますね。今はポケモンの“うたう”でぐっすりお休み中ですので、後でボールから出してあげてください」


渡された碧雅たちの入っているボールを受け取り、旅館へ戻る。なるべくボールを揺らさないようにゆっくりと運んだ。少しはリラックスできたかな。
旅館へ戻るとお風呂上がりの晶が浴衣に着替えてタオルを肩にかけていた。湯上り美人の完成だ。


「なんだ、もう雪うさぎたちが戻ったのか。随分早かったな」
「うん。今眠ってるから、ご飯前に起こしてあげようかなって」
「呑気なものだな。……、僕がこいつらを見てるから、お前も風呂に入ったらどうだ」
「今日の晶どうしたの、優しくない?何かやらかしたの?また緋翠を怒らせるようなことしたの?」
「僕の気が優しい内に早く視界から消えることだちんちくりん。さもなくばお前の頭上にドラゴンクローを振りかざすぞ」
「はい喜んで入ってまいります!」


前言撤回、ちっとも優しくなかった。


「ふぅ。さっぱりしたー」


露天風呂にピッピが入ってきたのはビックリしたけど、話しかけてみたらメスだったことと、温泉が気になってたみたいだから、一緒に温泉に入って過ごしちゃった。本物のピッピ、可愛かったなぁ。
腰に手を当てモーモーコーヒーを一気飲み。中身はコーヒーが追加されたモーモーミルクで普段からも飲めるのに、瓶に入っているというだけで特別感が出てより美味しいのは何故だろう。
ご飯の時間もそろそろ近いし、みんなを起こしておかないと。全員分のモーモーコーヒーも買ったし、温泉に浸かれて気分も上々だ。


「んなーーーっ!?」


廊下をスキップで進んでいると、晶の叫び声が聞こえた。慌てて部屋に戻ると、襖に後ろからへばりつくような形で晶が驚きの表情で佇んでいた。


「どうしたの?」
「どうしたもこうしたもない!お前、やっぱり取り違えたんだろう!」
「え?」


指の指す方を見てみれば、たたみの上でうつ伏せで寝ているのは緑色のスライムのようなぶにぶにに覆われたポケモン。そっとひっくり返してみれば、そのポケモンはランクルスだった。


(もしかして……)


嫌な予感がして他のボールも出してみると、出てきたのはゴウカザルにパチリス、ボーマンダにブイゼル……ちょっと待って、この手持ちポケモン、友達と同じパーティなんだけど。あと碧雅たちはどこへ消えちゃったの?


「“やっぱり”って、晶分かってたの?」
「お前が迎えに来たというのに、ひっつき虫がこの時間まで寝続けて起きてこないのはおかしいだろう」
「そういう理由!?」
『うーん……』


なんとも言えない理由に突っ込んでいると、ランクルスが目を覚ました。パチリと黒い目を開けたランクルスは私の顔を見るなり光の速さで後ずさった。


『な、ななななな、なんでユイがいるの!?』
「あれ、私のこと知ってる?」
『どうしたのユイ……?なんで私、こんな所にいるの?……レイナぁ……!』
「あわわわわ、泣き出しちゃったよどうしよう晶」
「甘味女がいないだけでこの体たらくとは、情けないぞスライム娘」
『うわああぁーん!』
「追い討ちかけないの!……待って、レイナって言った?」


ということはこのランクルス、やっぱり來夢ちゃん!?続けて目を覚ましたのはブイゼル……いや、恐らく幸矢君だった。幸矢君は目を覚まし、まだ寝てる残りの仲間と泣きじゃくっている來夢ちゃん、そして來夢ちゃんを宥めようと手を右往左往させていた私を見て、一言。


『アンタ、とうとう犯罪者になったのか』
「なってません!」


とうとうって何、とうとうって。



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