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ふぁ〜ぁ


隣をトコトコ歩く白恵の欠伸に釣られ、私も歩きながら自然と口が開く。欠伸は伝染すると聞いたことがあるけど、ポケモン相手でもその理屈は変わらないらしい。
熱すぎない調度良い日差しが緑を照らし、湿気の無い爽やかな風が吹き抜け、空は清涼な薄い水色。洗濯物もすぐ乾きそうなこの天気、正に100点満点。毎日こうであって欲しい。

長かった夏が終わり、少しずつ秋の気候に変わっていく。今まで昼の日差しの強さが夜にまで響いていた熱帯夜ともようやくおさらばだ。暑さでほとんどボールから出てこない引きこもり状態の碧雅もやっと外に出れる。……涼しくなっても嬉々として外に出るとは思わないけど。
今週のポワルン先生のてんきやによると、世間では紅葉が始まっているとの情報だった。紅葉、秋かぁ。


「秋といえば、やっぱり食欲の秋!」
「ユイちゃん、たべるのすきだもんね」
「うん!秋は南瓜でしょ、さつまいもでしょ、栗でしょ。秋のスイーツ食べるの毎年楽しみにしてるの」


あ、あと梨も捨てがたい。指折り数えながら、あれもこれもと食べたいものが沢山出てきた。秋は本当に美味しいものが目白押しだ。お菓子なら同じくシンオウにいるあの子が得意だし、機会があったら彼女のお手製秋スイーツを食べたいなぁ〜。……想像したらお腹すいてきちゃった。


『確実に太る未来しか考えられないし、ダイエットしても耐えきれずリバウンドしてそう』
「うっ……た、旅で運動してるからプラマイゼロでーす!」
『秋って言えばみんなは何浮かぶんだ?俺は食欲もそうだけど、やっぱりスポーツの秋だな!』
『“すぽぉつ”……運動の意だったな。夏に比べて秋は過ごしやすい、鍛練と勝負にはうってつけじゃないか』
『貴方はいつもバトルに明け暮れているでしょう。私は……紅葉の秋でしょうか。自然の織り成す紅葉の美しさはやはり目を見張るものがありますから』
『はっぱ、きれーだもんね』
「紅葉狩りもいいよねー。他だと読書の秋、芸術の秋、実りの秋とか?」


頭の中で色々と想像していたところで街が見えてきた。時間も丁度いいし、今夜はここのPCで一泊しようかな。
タウンマップによるとこの街の特色は、ジョウト地方という地方の建築物を参考に建てられた街並みのようだ。郷愁を感じさせる和の雰囲気を醸し出していて、観葉植物として植えられているイチョウの木は紅葉が始まっており、赤と黄が織り交ざる自然のコントラストの鮮やかさに感嘆の息が出る。気分はなんだか修学旅行に来た学生だ。
紅葉でできた自然の絨毯を案内板に書かれていた通りに進んで行くと、街の雰囲気に合わせてか、通常と違うカラーリングのPCが見えてきた。



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