07
セキタイタウンのお屋敷に1泊させてもらって、ついにバレンタインの当日がやってきた。
午前中はフユカと緑炎さんの案内でセキタイタウンを見て回った。
静かで素朴な雰囲気が特徴的な小さな町で、北側にあるストーンヘンジみたいな場所も見に行った。
"ここくらいしか観光できそうな場所が無くて悪いな"って、緑炎さんは苦笑いだったけど。
その後は町の外れにある列石群を見たり、木造のロッジみたいな外観のカフェでお茶したりした。
あのカフェの雰囲気、どことなく"カフェ・やまごや"に似てたなぁ。
碧雅が3つ目のアイスをオーダーするのは何とか阻止した。すんごいジト目で睨まれたよ。
セキタイタウンでの観光が終わった後は、お屋敷に戻ってランチをご馳走になる。
さて……本番はここからだ。
「ふぅ、お腹いっぱい! ごちそうさまでした!」
「とっても美味しかったです!」
「それはよろしゅうございました。
フユカ様、ユイ様……そろそろ皆さまにアレをお出ししますか?」
ジャンさんの口から発せられた"アレ"というワードに、みんなが首を傾げる。
私とフユカが"お願いします"と言うと、ジャンさんはルイさんとアイコンタクトして頷き合った。
「え、何? フユカちゃんたち、俺らに内緒で何してたの?」
「それは見てのお楽しみだよ、龍矢。
じゃあみんな、私たちがOK出すまで目を閉じててくれる?」
「は、はぁ……。姫がそう仰るのであれば……」
「何故そんなまどろっこしいことをする必要がある?
わざわざ目を閉じる必要は無いだろう」
「みんなを驚かせたいんだよ。だからね、目を閉じてて」
「お望みであれば私が晶の視界を塞ぎますが?」
「お前に任せると何をやられるか分からん。自分でやる」
全員が目を閉じたのを確認し、ジャンさんたちに合図を出す。
カラカラ、カチャカチャという音と一緒に、チョコレートがみんなの前に配膳されていく。
その反対側からはルイさんが花を1輪ずつ置いていった。
ちなみにルイさんが配っているのはグラシデアの花。
フユカが緑炎さんたちに渡すと聞いて、私も彼女に倣ってみんなに渡すことにしたのだ。
配膳を終えたジャンさんたちから、私たちに合図が送られた。
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