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大切な人と、甘いひと時を−−。



買い物のために入ったデパートの特設コーナーの前で、ふと足を止める。

どの棚を見てもたくさんの女性客が列を成し、真剣な顔をしてチョコレートを選んでいた。

(そっか……。もうそんな時期なんだなぁ)

月日の流れは早いもので、つい最近年が明けたと思っていたのに気が付けばもう2月。

つまり、バレンタインデーが近付きつつあった。

「マスター? 何か気になるものでもありましたか?」

「……うぅん、大丈夫。みんなを待たせるのも悪いし、ササッと終わらせちゃおうか」

隣で首を傾げている緋翠に笑みを返し、買い物カゴを持って常設コーナーに向かう。

(バレンタイン、かぁ……)

良いことを思い付いた私はある人物に連絡を入れるべく、足速に買い物を済ませた。



「えっ、もう作っちゃったの!?」

"うん、そうなんだ。手伝ってあげたいけど、私もその日は予定があって……"

買い物を終えた私が電話したのは、シンオウを旅する友達のレイナ。

レイナは今まで色んなお菓子を作ってくれたし、どれもお店に出しても良いくらい美味しかった。

お菓子作りが得意な彼女ならと思ったけど、今回はタイミングが合わなかったみたい。

「そっかぁ、残念。……レイナはやっぱりナオトと過ごすの?」

"そうだよ。2人でご飯食べに行こうって"

「へぇ、ラブラブじゃん! 楽しんでおいでよ」

"ありがとう。
……ほんとにゴメンね、ユイ。来年は一緒に作ろうね"

プツンという音と同時に真っ暗になった画面。

そこに映る私の顔は、我ながら少し寂しそうに見えた。

(どうしよう……。私1人だと自信無いし、でも紅眞に教わったんじゃサプライズにならないし……)

どうせ渡すなら、みんなを驚いた顔が見たいもんね。
よし、今度はフユカに電話してみよう!


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