01
大切な人と、甘いひと時を−−。
買い物のために入ったデパートの特設コーナーの前で、ふと足を止める。
どの棚を見てもたくさんの女性客が列を成し、真剣な顔をしてチョコレートを選んでいた。
(そっか……。もうそんな時期なんだなぁ)
月日の流れは早いもので、つい最近年が明けたと思っていたのに気が付けばもう2月。
つまり、バレンタインデーが近付きつつあった。
「マスター? 何か気になるものでもありましたか?」
「……うぅん、大丈夫。みんなを待たせるのも悪いし、ササッと終わらせちゃおうか」
隣で首を傾げている緋翠に笑みを返し、買い物カゴを持って常設コーナーに向かう。
(バレンタイン、かぁ……)
良いことを思い付いた私はある人物に連絡を入れるべく、足速に買い物を済ませた。
「えっ、もう作っちゃったの!?」
"うん、そうなんだ。手伝ってあげたいけど、私もその日は予定があって……"
買い物を終えた私が電話したのは、シンオウを旅する友達のレイナ。
レイナは今まで色んなお菓子を作ってくれたし、どれもお店に出しても良いくらい美味しかった。
お菓子作りが得意な彼女ならと思ったけど、今回はタイミングが合わなかったみたい。
「そっかぁ、残念。……レイナはやっぱりナオトと過ごすの?」
"そうだよ。2人でご飯食べに行こうって"
「へぇ、ラブラブじゃん! 楽しんでおいでよ」
"ありがとう。
……ほんとにゴメンね、ユイ。来年は一緒に作ろうね"
プツンという音と同時に真っ暗になった画面。
そこに映る私の顔は、我ながら少し寂しそうに見えた。
(どうしよう……。私1人だと自信無いし、でも紅眞に教わったんじゃサプライズにならないし……)
どうせ渡すなら、みんなを驚いた顔が見たいもんね。
よし、今度はフユカに電話してみよう!
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