04
運営責任者であるナナカマド博士の挨拶が終わった後、待ちに待っていたシンオウフェスタが始まった。
早速屋台に駆け込もうとした焔君と勇人君を、レイナが必死に止める。
……確かあの2人、飛行機の機内食も2〜3人前平らげてなかったかな。
客室乗務員さんの顔が青ざめてた気がするよ。
「飛行機であれだけ食べたくせして、まだ食べるのか……」
幸矢君がげんなりした顔でそう零す。
そういえば彼は、"絶対に食べきれないから"ってレイナとシェアしてたっけ。
「幸矢君って、もしかして少食?」
「そうだね。あんまりたくさん食べる方じゃないかな」
「お前もうちっと食えよ、幸矢。んな細い体じゃ、すぐバテちまうぞ?」
「なっ……! アンタと同じ基準にするな!」
「そもそも君と焔の胃袋がバカみたいに規格外なんだって分かってる?」
確かにあの機内食、ちょっと量が多かった。
私たちで何とか食べきれる量だったから、少食の幸矢君にはキツかったかもしれない。
あの時のことを思い出したのか、晶も眉間に皺を寄せている。
「僕もしばらく食べ物は見たくない。アレに限ってはお前に同情するぞ、みかん頭」
「……ゴシュウショウサマ?」
「ちょっ、どこでそんな言葉覚えたの蒼真?」
「っていうか幸矢君のことを"みかん頭"って……」
カロスに来るまでのことを話しながら催し物を見て回る。
やっぱり1番の人気は"シンオウふれあい体験"のコーナーだった。
カロスに生息していないポケモンが珍しいのか、子どもから大人まで大勢の人で賑わっている。
「……おや。姫、あそこにミミロルがいますよ」
「あっ、本当だ! 私ちょっとモフモフさせてもらってくる!」
ミミロルに向かって駆け出したフユカの後を、白刃君が慌てて追いかける。
転ばないようにと差し出した手を取られた瞬間、白刃君の顔が真っ赤に染まった。
え、何アレ。ちょっと面白い。
「白刃君のお姫様扱いも相変わらずだねぇ」
「えぇ。付き合いも長くなりましたから、フユカもさほど気にしなくなってきたようですわ」
「"気にしなくなってきた"っていうより、"気にしたら負け"って感じだと思うけどねぇ。
ところで1つ気になったんだけど……レイナちゃん、あのナオトってやつと進展あったでしょ」
「へっ!?」
龍矢君の指摘に、今度はレイナが顔を真っ赤にする番だった。
確かに何となく雰囲気変わったなーって思ってたけど……。
「べべべ別に何もないよ!?」
「おっと、俺の目は誤魔化せないよ? いずれは分かることだし、今お兄さんに話してごらん?」
龍矢の金色の瞳に見つめられて、レイナは口をパクパクとさせる。
ミミロルのモコモコを堪能したらしいフユカが戻ってくるのと同時に、笑理ちゃんが満面の笑みで答えた。
「レイナね、ナオトと"お付き合い"することになったんだよ!」
「「ええぇぇっ!?」」
笑理ちゃんからの衝撃のカミングアウトに、私とフユカの声が綺麗にハモる。
お、お付き合い……レイナとナオトが……。
それって、もしかしなくてもそういうこと!?
「へぇ、それはおめでたいね。けどいつの間にそういう関係になったんだい、レイナさん?」
「っていうか、そんな大事なこと何で言ってくれなかったの!?」
「い、言おうとは思ってたんだよ!? でもまだ心の準備ができてなかったっていうか……もう、笑理!」
「エヘヘ、ごめんなさーい!」
笑理ちゃん……間違いなく確信犯だな、アレ。
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