09
飛行機の時間まで女の子と話をして時間を潰す。
彼女はポケモンと一緒に、イッシュ地方のジムを巡ってるんだって。
ヒウンシティには2日程前に来たんだそうだ。
……ってことを、言葉少なに教えてくれた。
(ものすごく距離を置かれてる気がする)
初対面なのに馴れ馴れしくし過ぎたかな、とも思ったけど……。
私以外はポケモンだと聞いてから、ほんの少しだけ態度は軟化したように思う。
紅眞や璃珀とも普通に喋ってるし、人見知りな子なのかな?
「おい、ちんちくりん。いつまで油を売ってる?
このままイッシュ地方に居座るつもりか?」
「え? わ、ありがとう晶! えっと、じゃあ私たち行くよ。
またどこかで会えたら良いね!」
女の子の手を握って、真っ直ぐに目を見る。
挨拶もそこそこに、私たちはヒウン空港へと急いだ。
あ、そういえば名前聞くの忘れた!
コロコロと表情がよく変わると思った。
笑ったかと思ったら驚いたり、怒ったと思ったら泣きそうな顔になったり。
("また"、か……)
5体の擬人化したポケモンを連れた、"ユイ"という名前のトレーナー。
私に対して、人懐っこいポケモンのように笑顔を向けて。
「……変な子」
私がそう零すと同時に、彼らが帰ってきた。
「おかえり、2人とも」
『うむ、今戻ったぞ! しかし……何ぞほうけておったようじゃが?』
『あのトレーナーが気になるのか?』
「ちょっとね。だけど人は人、私たちは私たちの旅を続けるだけだよ。
さて、ご飯でも食べに行こうか」
ポケモンセンターを出る私の後ろを、2人がついて歩く。
(……まぁ、危険な旅にならないように祈るくらいはしてあげるよ。"お互い"にね)
並んで歩く私たちの頭上を、1機の飛行機が飛んで行った。
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