05


「へぇー。じゃあ、レイナもトリップしてきたんだ」

「うん。実際に経験するまでトリップなんて信じられなかったけどね」

あれから互いの自己紹介を済ませて話をしていたら、ユイもトリッパーだということですっかり意気投合。

「そういえば、來夢ちゃんってランクルスなんだよね? シンオウには生息してないんじゃ……」

「私もその時のことはよく覚えてないの。気がついたらシンジ湖にいたから」

「そういえばレイナ。さっきから気になってたんだが、お前の持ってるその棒……何に使うんだ?」

「それは私も気になっていました」

「山道歩くときの杖とか?」

竜牙君の答えは半分合っている。もう1つの使い方を聞いたら、みんな驚くんだろうな。

うちの連れにも話したことないし。

「竜牙君、半分合ってるよ。でも、この棒にはもう1つの使い方があるんだ」

「どんな風に使うの?」

「それはね、b「きゃああっ!」

突然聞こえてきた悲鳴に、その場にいた全員が何事かとあたりを見回す。

すると、黒い服装に黒いサングラスでマスクを付けた人物がこっちに向かって走ってきていた。

ちょっと待って、それどんな不審者?

「ひったくりよ! 誰か捕まえてー!」

何てベタな展開だ。でもまぁ、人が困ってるわけですし、いっちょやるとしますか!

「えっ!? ちょっと、レイナ!?」

みんなが驚くのも無理はない。

私は今、向かってくるひったくりと対峙している状態に近いのだから。

「邪魔だ! どけ!」

よーく狙って……今だ!

「はっ!」

ゴッ! ズシャッ!

持っていた木の棒でひったくりの向こう脛を思いっきり払う。

いきなり足に攻撃を食らってバランスを崩したひったくりは、私たちの目の前で派手にすっ転んだ。



「なっ……!」

「え……」

「マジか……」

「うっそーん……」

幸夜君、蒼陽君、竜牙君、ユイの順番で言葉を発する。

うちのメンバーも全員キョトン顔だ。

それからしばらくして、現場に到着したジュンサーさんによってひったくりは逮捕。

ひったくられたカバンも、無事持ち主のもとへ返された。

「レイナ! さっきのかっこよかったよ!」

「えへへ、ありがとう。

もともと護身術用に杖道習ってたんだけど、こんな場面で役に立つと思わなかったなぁ」

「ただグーパンで木をへし折るだけのユイとは違うな」

「え!?」

それも充分すごいと思うよ!?

「なかなか見事な払いでしたよ。初めはとんだバカだと思いましたが、見直しました」

「ありがと、蒼陽君」

「蒼陽が他人を褒めるなんて……明日は雨かな……」

「いや、雪だな」

「むしろ槍が降ったりしてな」

どんだけ!?

「あなたたち、人が黙っていれば言いたい放題に……。
分かりました。今日の夕飯はキノコづくしにしましょう」

「それ俺にしか被害ないじゃん!」

「アハハ……」

蒼陽君……まさかのドSか。


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