08
ランチ休憩を挟んで3回戦目。
1回戦を勝ち抜いた私と、2回戦を勝ち抜いたナオトでのバトルだ。
「次は君とだね、ユイ。よろしく頼むよ」
「お、お手柔らかにお願いします……」
フユカとのバトルを見ただけで分かる。
ナオトは……絶対手強い!
「準備は良いかい? それでは、バトル開始!」
「お願いね、緋翠!」
『お任せください、マスター』
「頼むぞ、澪!」
『はーい』
ナオトが繰り出したのは、イーブイの澪君。
普段の眠そうな表情は鳴りを潜めて、目に力強い光が宿っている。
緋翠もやる気満々だし、トレーナーの私が怖気付いてたらダメだよね。
ここは守りを固めて、堅実に進めよう。
先攻はお決まりのジャンケンで、ナオトに決まった。
「接近戦で攻めるぞ。アイアンテール!」
「リフレクターで防御!」
澪君が尻尾を銀色に光らせて走ってくる。緋翠はそれをリフレクターで受けきった。
「なるほど、防御を補強したのか。
それならこれはどうだい? シャドーボール!」
『分かった』
しまった、澪君シャドーボール覚えてたのか。
緋翠には効果抜群だから、直撃したらマズイな。
「躱してサイコキネシス!」
サイコキネシスで体を浮かせて地面に叩き付ける。
澪君は"フギュッ!?"って言ってお腹から激突した。ゴメン……。
「影分身で撹乱して!」
『はい!』
緋翠の姿を象った分身が、澪君をぐるっと取り囲む。
本体は……うん、私もどこにいるのか分からない。
「影分身とは厄介だな……。
こうなったら奥の手だ。澪、"眠る"!」
「えっ、"眠る"!?」
指示を受けた澪君は、"おやすみ"と言って眠ってしまった。
『全方位囲まれてるのに眠らせるなんてバカなの、アイツ?』
碧雅、そういうこと言うんじゃありません!
でも彼の言うとおり、緋翠の分身たちの中心で寝息を立てている澪君はかわい……じゃなくてあまりにも無防備で。
これじゃあ"どうぞ攻撃してください"と言っているようなものだ。
「でもチャンスかもしれない。
緋翠、澪君に接近してサイコキネシス!」
『かしこまりました!』
緋翠が体を浮かせて澪君に近付いて行く。
それを見たナオトはニッと笑った。
「あれが本体か。澪、寝言!」
その言葉を聞いて、眠らせたのは囮だったことに気付く。
至近距離まで近付いた緋翠を、アイアンテールが襲った。
直接あの技を指示したわけじゃないのに、どうして?
『"寝言"……。自分の持つ技をランダムで繰り出す技ですね。
眠っている間しか使用できない技でもあるとか』
そっか。眠って体力を回復させながら、反撃も取るスタンスなんだ。
寝ることが好きな、澪君らしい戦闘スタイルだと思う。
でも、私だってそう簡単には負けられない!
「どの技が出るのかはある意味賭けだが……。
澪、寝言でフィニッシュだ!」
『……むにゃむにゃ……シャドーボールぅ……』
澪君の放ったシャドーボールが緋翠に向かって真っ直ぐ飛んでくる。
よーく狙って……今だ!
「光の壁で弾いて!」
『かしこまりました!』
物理技にはリフレクター、特殊技には光の壁。
旅の中で培ってきた、緋翠の持ち味が光る戦法だ。
「そのままサイコキネシス!」
『マスターのため……この勝負、勝たせていただきます!』
サイコキネシスでふよふよと体の浮かんだ澪君は、眠ったまま地面と激突。
その衝撃で目を覚ましたものの、戦闘不能になったのだった。
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