03
以上の経緯があって、私は飛行機の予約をしていたのだ。
「えっと……シンオウ行きのムクホーク便。よし、予約完了!
あとは、アレックスさんが戻ってくるのを待つだけですね」
「ありがとうフユカさん、助かったよ。……っと、電話だ」
博士が携帯電話で電話している間に、もう1度間違いが無いかチェックする。
ダブルチェック、大事。
「ええっ!? 大丈夫なのかい?」
突然大きな声を出した博士にビックリして、思わず肩が跳ねる。
何があったんだろう?
しばらく博士の様子を伺っていると、とても残念そうに"そうか、分かった"と言って電話を切った。
「あの……アレックスさん、何かあったんですか?」
「あぁ、水恋が熱を出してしまったらしくてね。明日の学会の同行に間に合わなくなってしまったんだ」
「水姉さんが!?」
博士に聞いたスケジュールでは、学会が開かれるのは3日後。
前日はリハーサルの日になっているので、明日にはカロスを出発してなければならない。
今回の学会は重要な研究発表の場らしく、欠席は出来ないんだって。
かと言って水姉さんを1人残すわけにはいかないし、私はヒャッコクシティに行ったことがないから道が分からない。
これ、詰んだのでは?
「そうだ! フユカさん、アレックスの代役を君に頼めないかい?」
「ええっ!?」
アレックスさんの代役ってことは、アレだよね。
研究発表の参考資料とか配ったり、プレゼンテーションのサポートしたり……"博士の助手"として同行するってことだよね!?
「むむむ無理です! 私、学会なんて参加したことないし……」
「そこを何とか頼むよ! もう君しか頼れる人がいないんだ」
顔の前で両手を合わせて眉を下げるプラターヌ博士。やめて私はそのショボン顔に弱いの!
でも、博士とアレックスさんたちにはお世話になってるし……。えぇい、ままよ!
「……分かりました。私で良ければ」
「本当かい!? 重ね重ねありがとう!
参考資料は配るだけで良いようにしておくし、プレゼンテーションの切り替えはきちんと合図するから。
このお礼は必ずするよ!」
私の両手を握って満面の笑みで"ありがとう"と繰り返す博士。
もう、成るに任せるしかないんだから、気持ちを切り替えよう。
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