05
「はぁ、楽しかった!」
「そうだね。観客席から見るコンテストって、あんな感じなんだ……」
4人で大通りを歩きながら、さっき見たコンテストを思い出す。
"ポケモンの魅力を引き出す"って口では簡単に言えるけど、その努力が並大抵のものじゃないことは素人目でも分かった。
色々勉強して、試行錯誤して作り上げていってるんだろうなぁ。
「カロスじゃ見られないポケモンもたくさん見れたし、大満足だよ!
あのミミロルってポケモン、モコモコしてて可愛かったなぁ」
「あら、フユカだって負けてないわ!」
こーんなに可愛いのに! って言いながら両手でフユカのほっぺをモニモニと揉む水恋さん。
……何というか、カロスの人って感情表現とか愛情表現がストレートだよね。
水恋さんが特別なだけ?
「いやそれはまた次元が違うような気が……。でも、ありがと」
「フユカと水恋さん、本当に仲が良いよね。
……あ、着いたみたい」
前方に大きな公園が見えてくる。入口の看板に目をやると、そこには"ふれあい広場"の文字があった。
ゲートをくぐって足を踏み入れる。爽やかな風が芝生を駆け抜け、天気も良い。
絶好のピクニック日和で、たくさんのトレーナーたちが自分のポケモンたちと自由な時間を過ごしていた。
私たちも碧雅たちをボールから出し、"ランチの準備が出来るまで遊んでおいで"とみんなを見送った。
緑炎さんと誠士君はお弁当の買い出しに出かけていった。
誠士君はフカマルからガバイトに進化したらしく、前に会った時よりイケメン度が増していた。
どこのメンズモデルかと思ったよ。
今日は涼しい気候なこともあって、碧雅も紅眞に腕を引っ張られていく。
レジャーシートを敷いてお弁当の準備をしていると、緋翠がどこか落ち着かない様子で戻ってきた。
「どうしたの、緋翠?」
「何か私にお手伝い出来ることはありませんか?」
「大丈夫だよ。せっかくみんなと一緒なんだし、たまには思いっきり遊んでおいで?」
「しかしマスターとそのご友人に仕事をさせて、自分は遊んでくるなんて……」
緋翠が困ったように目を伏せる。その真意に、私は気付いた。
(そっか、緋翠は"友達と遊ぶ"ってことを知らずに過ごしてきたんだっけ……)
緋翠の過去の事を思えば、いきなり"遊んでおいで"と言われてもどうすれば良いのか分からなくて当然だ。
「……じゃあ、緋翠には紅茶を淹れてもらおうかな。
レイナ、フユカ、それでも良い?」
「もちろん。そうしてくれると助かるよ」
「緋翠君って紅茶淹れるの得意なの? 楽しみになってきたなぁ」
「……はい! お任せください、マスター!」
緋翠がパアッ! と笑顔になり、いそいそとティーセットの準備を始める。
その時、ちょうど良いタイミングで緑炎さんと誠士君が戻ってきた。
2人の手に抱えられているのは大量のサンドイッチ。
正直食べきれないと思ったけど、ふと焔君と勇人君という大食いコンビがいることを思い出した。
「随分たくさん買ってきたのね。食べきれるかしら?」
「大丈夫だ。いざとなったら焔と勇人が食べる」
「でも、腹8分目にしてもらわないとね。今日はデザートもあるんだし。
余った分は明日の朝ご飯にしようか」
遊びに行っていたみんなを呼び寄せ、賑やかなランチタイムが始まった。
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