05




「ゼェ……ゼェ……!」

「ハァ……ハァ……! ……に、逃げきれた……のかな……?」



何度も脚がもつれそうになりながらも、ようやくたどり着いたうららか草原。

穏やかな日差しに照らされたそこで、私と男の子は息を整えることに専念していた。

緋翠がボールから飛び出してきて、"おケガはありませんか、マスター!?"と慌てた様子で聞いてくる。

打ち身くらいで済んだのが不幸中の幸いだったかも。成り行きで引っ張られるままここまで来たけど、彼は何者なんだろう……。

っていうか今気付いた。この人すんごいイケメンだね?

顔も良くてスタイルも良いし、背も高い。絶対女の子たちが見過ごさないと思うよ。

外見のイケメン度はナオトと良い勝負じゃない?

「まさか2回もキテルグマから逃げ回る羽目になるとか……」

「あ、あの……ごめんなさい。キテルグマがあんなに怖いポケモンだったなんて知らなくて……」

「あー……まぁあんなゆるキャラみたいな見た目してんだからそうなるよな。
俺も初見はそんなだったし、あんま気にすんなよ」

か、彼も同じ経験してたんだ……。

キテルグマは怖いポケモン。うん、覚えた……。

「それより、助けてくれてありがとうございます。
私はユイって言います。あなたは?」

「俺はユウヤ。一応、ガラル地方のトレーナー……になるのか?
まぁ、そういうことでよろしく。見た感じ歳も近そうだし、タメ口で良いぜ」

男の子改め、ユウヤ君がヒラヒラと手を振る。

トレーナーってことは、ガラル地方のジムを巡ってるんだぁ。……あっ!?

「そうだ! さっきの青い子は大丈夫かな!?
ユウヤ君のポケモンなんだよね!?」

「あー、アイツな……」

『"アイツな"って……! お前自分のポケモンが心配じゃねぇのかよ!』

「大丈夫だって。アイツなら……」

『僕ならここにいるよ』

どこからか聞こえてきた声に、私たちはキョロキョロと辺りを見回す。

するとユウヤ君の隣から、あの青い子が姿を現した。

何も無いところから出てきたような登場に、思わず変な声が出てしまったのは大目に見て欲しい。

『よばれてとびでてジャジャジャジャーン?』

『白恵君、そのネタはもう古いと思うよ』

『貴様……あれだけの距離をどうやって瞬間移動した?
ひっつき虫と同じエスパータイプか?』

『僕は水タイプだよ。水に触れると体が透明になって、姿を隠すことができるから』

『何だそれ、スゲェ! 忍者みたいでカッケェな!』

『あぁ、"ステルス戦法"ってそういうこと……』

「凪もお疲れさん。よくやってくれたな」

『エヘヘ、どういたしまして』

ユウヤ君に頭を撫でてもらった凪君が、嬉しそうに笑う。

何この子、メチャクチャ可愛いんだけど!

『あっ、凪だけズルーい! ご主人、僕も撫でてー!』

『アンタも災難だったわね。これからはキテルグマに近付いちゃダメよ?』

凪君の隣に現れた2匹のポケモン。片方はシンオウにも生息しているロゼリア、もう片方は見たことの無いポケモンだった。

短い足にむっちりボディ……この子も可愛い!

「この子たちもユウヤ君のポケモンなの?」

「まぁな。ワンパチの大和とロゼリアの瑞貴だ」

『ご主人の新しい友達?
僕はワンパチの大和だよ。よろしくね』

『ハァイ、お嬢ちゃんたち♪ アタシはロゼリアの瑞貴よ』

ロゼリア……瑞貴君はオネェキャラなんだねぇ。カイちゃんと仲良くなれそうだな。

大和君も目が星みたいな模様になってて可愛い。

「あっ、そうだ! 私のポケモンたちも紹介するよ。
みんな出ておいで!」

緋翠以外のボールを手に取り、軽く投げ上げる。

外に飛び出してきたみんなを見て、ユウヤ君の青い目が見開かれた。

「どのポケモンも知らないヤツばっかだな。ミロカロスは見たことあっけど、色が違うし……。
もしかしてユイって、ガラルのトレーナーじゃねぇのか?」

「うん、私たちシンオウのトレーナーなんだ。ガラルには旅行で来てるんだよ。
まずは碧雅。私の最初のポケモンで、種族はグレイシア」

『……どうも』

「それからバシャーモの紅眞と、サーナイトの緋翠」

『さっきは怒鳴ってゴメンなー。よろしく!』

『マスターを助けていただき、ありがとうございます。よろしくお願いしますね』

「ミロカロスの璃珀と、チルタリスの晶。最後にトゲチックの白恵だよ」

『よろしく頼むよ、ユウヤくん』

『……』

『よろしくね、ユウヤちゃん』

「スゲー……。手持ち6体揃ってんのな」

ガラルの人にとってやっぱりシンオウのポケモンは珍しいのか、ユウヤ君が碧雅たちをマジマジと見つめる。

そして晶に"ジロジロと見るな、黒助!"って怒られてた。黒助って……。


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