04
「凪、キテルグマに水鉄砲だ! 顔を狙え!」
どこからともなく聞こえてきた声と同時に、キテルグマの顔へ水鉄砲が噴射される。
それは見事キテルグマの顔に命中し、視界を奪うことに成功。私たちの目の前に現れたのは、水色のトカゲのようなポケモンだった。
そして私たちの後ろからは、黒いパーカーを着た男の子が走ってくるのが見える。
「おいアンタ、大丈夫か!」
「……は、はいっ! なんとか!」
「キテルグマは俺らでなんとかすっから、アンタはあっちのうららか草原に向かって走れ!」
「そうしたいんですけど……あ、脚が動かなくて……!」
あれだけの距離を休まずに走ってきたんだ。私の脚は既に悲鳴を上げていて、とても走れそうにない。
男の子は私を一瞥すると、"凪!"とトカゲのようなポケモンを呼んだ。
「姿を隠して撹乱してくれ! 俺たちが走り出したらお前も逃げろ!」
『分かった!』
「ほら、行くぞ!」
「えっ! でも、あの子は!?」
逃げろとは言ってたけど、あんな危険なポケモンと戦わせられない!
キテルグマのあの力を見た後だから尚更だ。
「アイツが得意なのはステルス戦法だから上手くやってくれる。
それより今はアンタだ! キテルグマに骨折られたくねぇだろ!」
「それは嫌だ!」
男の子に腕を捕まれて立ち上がり、彼がさっき指差していた方向へ走る。
あの青い子が無事に逃げられることを、ただひたすらに願った。
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