03

ポケモンセンターで無事にキャンプ道具を借りて、ワイルドエリアへ続くゲートを通る。

出口を通過した私たちの目の前に広がったのは、広大な自然公園のような場所だった。

というか、璃珀の言ってた通り広っ!?

「すごーい! 広ーい!」

「バカっぽい感想言うのやめてくれる」

「でも天気も良いし、絶好のキャンプ日和なんじゃねぇか?」

「それはどうだろうね。ワイルドエリアは常に空模様が不安定で、エリアが変わるごとに天気も変わるからね」

「そんなに天気が変わりやすいのですか?」

「うん。その証拠に、あっちを見てごらん」

璃珀指さす方を見ると、空には分厚い雲がかかっていて雷まで鳴っている。

えっ、今私たちがいるところは晴れてるのに……どういう理屈?

『さて……強そうなポケモンを探しに行くぞ、ちんちくりん』

「あっ、ちょっと待って!はぐれちゃうから1人で行動しないで!」

よっぽど待ちきれなかったんだろう。いつの間にか擬人化を解いていた晶が、何か見張り塔らしき建物がある方に移動していく。

その後ろ姿を慌てて追い掛けた。



『……フン。この辺りのポケモンは口程にも無かったな
まったく、これではトレーニングにならないだろう』

「いきなり知らないポケモンにバトル仕掛けられて、ボコボコにされるあの子たちの方が可哀想だと思うよ私は」

見張り塔跡地というらしいエリアに来た私たちは、野生のポケモンに片っ端からバトルを挑む晶を必死に追い掛けた。

この辺のポケモンはまだレベルが低めの子たちが多いのか、ものの見事にボコボコにされていくのを見てすごく申し訳ない気持ちでいっぱい……。

晶の圧に耐えられずに怯えちゃったり、泣き出しちゃったりする子とはさすがにバトルはしなかったみたいだけど……。でも1人1人に謝って回るのも大変なんだからね!

『もっと骨のあるヤツはいないのか?
どうせならジムリーダーレベルのポケモンとバトルしたいものだがな』

「……ん? なぁ晶、あのポケモンお前に手ぇ振ってないか?」

紅眞が見ている方向に目を向けると、クマの着ぐるみのようなポケモンがこっちに向かって両手を振っているのが見える。

それを見た璃珀の顔が引き攣っているのも見えた。

『あのポケモン……なかなか強そうじゃないか。面白い!』

「待ってくれ晶くん! あのポケモンに真っ向から挑むのは自滅行為……」

『相手を恐れていて強くなれるか』

晶が璃珀の静止を振り切って、着ぐるみのようなポケモンに近付いていく。

次の瞬間……あのポケモンの隣にあった木が一瞬で吹き飛んだ。

「……え?」

え、あの木結構太かったよね? それを……あんな簡単に……?

し、しかも真っ二つになっ……!?

「ご主人! 今すぐ晶くんをボールに戻してくれ、早く!」

「ふえっ!? わ……分かった!」

『おい、ふざけるなロン毛! まだ勝負は始まってすらないぞ!』

「あのポケモンはキテルグマ!
"森の格闘王"とも言われていて、丸太や骨を折るのは彼らにとって息をするのと同じだくらい簡単だ! 今の俺たちがバトルを仕掛けたら最後、大ケガは避けられない!」

「そんなにヤベェのか、アイツ!?」

状況はよく分かってないけど、今すぐ晶を連れて逃げないといけないことだけは分かった。あとは、今の私たちでは到底敵わない相手であることも。

急いで全員をボールに戻し、方角も分からずにただひたすら走る。

でもキテルグマ? はどこにそんな脚力があるのかと思うほど、まったくスピードが落ちなかった。あと真顔なのが余計に怖い!

「も、もう無理……! 脚がもつれそ……わぁっ!?」

石につまずいてしまい、盛大に転ぶ。

ここまで全力疾走したのもあって脚も動きそうにないのに、すぐそこまでキテルグマの姿が近付いてきているのが見えて。

あぁ、こんなことなら素直に街の観光にしておくんだったなぁ……と目を強く瞑った。


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