03

カロス旅行2日目。

美味しいもの巡りは昨日堪能したので、今日は観光スポットを回ろうということになった。

でも街のシンボルであるプリズムタワーへは、今は入れないそうで断念するしかなかった。

停電中なら仕方ないね。

プロモスタジオでトレーナープロモの制作を体験したり、ミアレ美術館で絵画や彫刻を見たりした。

ブティックにも入ってみたかったけど、ドレスコードがある時点で諦めたよ……。

「歩き回ったからちょっと疲れてきたね。カフェで何か飲もうか?」

「良いんじゃない? 僕はアイスティーね」

「俺も!」

どこのカフェに行こうかと頭を悩ませていると、どこからか怒鳴り声が聞こえてきた。

え、ヤンキー? 何ソレ怖イ。

でも怖いもの見たさがあるのも事実で、碧雅が止めるのも聞かずに騒ぎの中心を覗き見る。

「お止めなさい! 小さな子を相手に大人気ないではないですか!」

「うるせぇな、ぶつかってきたそのガキが悪いんだろ。
それとも何か? アンタがそいつの代わりに責任取ってくれんのか?」

そこにいたのはガラの悪い男3人組と、昨日出会った着物の女の子だった。

女の子は小さな男の子を庇うように立っている。男の子の方は今にも泣き出しそうだ。

正直とても怖いけど、あんなの放っておけない……!

その時、男の1人が女の子に殴り掛かった。

「危な……!?」

私の隣を誰かが猛スピードで横切って行った。それと同時に、パンッと音がする。

1拍遅れて"誰か"の方を見ると、女の子と男連中の間に緑の髪の男性が割って入っていた。

相手の拳を素手で受け止めているようだ。すごい……。

「緑炎!」

女の子が安堵の息と一緒に男性のものであろう名前を呼ぶ。

あの人、緑炎って言うんだ。

「災難だったな、大丈夫か?」

「えぇ、ありがとうございます」

「……チッ、邪魔しやがって! こいつらを潰せ、ブロスター!」

激昂した男は大きなエビのような青いポケモンを繰り出し、あとの2人もそれぞれポケモンを出した。

「ち、ちょっと! 3対1なんて卑怯じゃない!」

「貴女は昨日の……?」

女の子が私を見て目を見開く。

ガレットのお礼っていうわけじゃないけど、彼らを助けたいと強く思った。

「このバトル、私も戦います!」

「お前は?」

「私、シンオウから来たユイと言います。昨日あの女の子に助けて貰いました」

「あぁ、お前が他地方からの観光客か。
だがそれなら尚更巻き込む訳にはいかねぇ」

この人の判断は正しいのかもしれない。

でも私も退けない。退きたくない。

「トレーナーになりたてで足を引っ張ってしまうかもしれないけど、こんなの放って置けないんです」

「……分かった。そこまで言うなら力を借りる。
こっちで上手くフォローするから、お前はお前の思うバトルをしてくれ」

「はい! よし、やるよ碧雅!」

「仕方ないな……」

碧雅が擬人化を解いた、その時。

「あ、いた! 雅、大丈夫!?」

私と同じ歳の頃であろう黒髪の女の子と、白髪の男の人が走って来ていた。

『何であの人、僕の名前知ってるわけ?』

「さぁ……?」

「そのグレイシア、"みやび"って言うんだな。
お前たちにガレット譲ったあいつの名前も"みやび"なんだよ」

「そうなのか!?」

紅眞が大きな目を更に見開く。

まさかの同名! ……いや、字は違うのかもしれないけど。

「私は大丈夫です。フユカ、白刃、来てくれてありがとうございます」

「良かったぁ……。ここは私たちに任せて、雅はその子を安全な場所に」

「えぇ」

雅さんが少し離れたところで、黒髪の女の子と目が合った。

「君は?」

「昨日雅がガレット譲った観光客だ。タッグを組むことになってる」

「そうなんだ。君、ありがとうね。
さぁ緑炎、白刃! チャチャッと片付けて、ジュンサーさんに突き出してやろう!」

「おぅ」

「姫の御心のままに」

緑炎さんと白刃さんも擬人化を解く。光が消えると、そこにはジュプトルとアブソルが立っていた。

あの2人もポケモンだったんだ……。


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