06
「グレイシア・バシャーモ、そしてハッサム・シャワーズ共に戦闘不能!
よってこの勝負、引き分け!」
幸矢の号令が、勝負の幕引きを告げる。
緊迫した空気から解放された私の喉から、ハァ〜ッと声が漏れた。
ユイもプツリと糸が切れたみたいに座り込んでるし、ナオトも少し呆然としていて我に返るまでに少し時間が掛かってるみたい。
でも……本当に良いバトルだった。
ナオトは先輩トレーナーとしてそのバトルと経験を発揮していたし、ユイも決して諦めることなく戦い抜いた。
そして何より……お互いが自分のポケモンを信じているからこそできる、とても魅了されるバトルだったと思う。
「き、緊張した〜!」
「ユイ、ナオト、お疲れ様! とっても良いバトルだったよ!」
「ナオト相手にあそこまで戦うなんてやるじゃねぇか、ユイ!」
「まさか僕の作戦を最後で返されるとは思わなかったよ。
でも、ユイもそれだけ成長しているという証だね」
「エヘヘ……でも私も色々勉強になったよ。今回は引き分けだったけど、次に会う時は負けないから!」
ユイが力強く笑いながら、ナオトと握手を交わす。
その瞳は早くも再戦に向けて強い光を宿していた。
しかしお互いの健闘を称える良い雰囲気も束の間、突然"ぐうぅぅ〜"という音が響く。
お腹の虫が鳴いたのは、焔だった。
「もう焔、今すごく良いシーンなのに」
「ごめんなさーい。でも僕お腹空いちゃった」
「ちょうどランチの時間に差し掛かる頃だ。みんなが治療を受けている間に準備してしまおう」
「よーし、今日は私もお料理張り切っちゃおうかな!
緋色に教えてもらった、半熟卵のタンポポオムライス作るよ」
「何それ!? 絶対美味しいじゃん!」
「その前に雨で濡れたヤツはシャワーを浴びた方が良い。そのままだと風邪引くぞ」
みんなで研究所に戻り、ランチを準備する班とシャワーを浴びる班とに別れた。
調理室に向かいながらみんなの喜ぶ顔を想像して、思わず口角が上がる。
今回のバトルを通じて同じトレーナーとして、先達として、ライバルとして……。
そして何より友達としてユイたちの成長を嬉しく思う自分がいて、自然と足取りが軽くなるのを感じていた。
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