04

「……チルタリス、トゲチック、戦闘不能。ムクホーク、ハガネールの勝ち」

「良いねぇ、まずはナオトの1勝だな」

「勇人、ビデオに声入っちゃうよ?」

「今更だろ。昨日のバトルだって青刃と緋色の声がバッチリ入ってんだしよ」

「お互い変化技と回復技、この2つが上手く噛み合った良い試合だったな。
勝敗を分けたのは、やはり銀嶺の耐久力か」

とはいえ、まだまだ勝負は分からない。

ナオトもユイも……出番を控えている彼らのポケモンたちも、やる気は十分なのだから。

「では2回戦に移るぞ。両者、準備は良いな?」

「もちろんさ。青刃、天馬、アドミッション!」

「さっきは負けちゃったけど、次はこうは行かないよ!
お願いね、緋翠、璃珀!」

2人がそれぞれ繰り出したのは、緋翠君・璃珀さんと天馬・青刃。

耐久型の2人に天馬と青刃がどう戦うのか、少し楽しみだ。

『天馬に青刃……。鋼タイプの青刃が要注意でしょうか』

『そうとも言い切れないかもしれないね。見てごらん』

璃珀さんのその声に、つい私も天馬を見やる。

彼の首元には耐熱素材の小さな巾着袋がある。その中身は……やっぱりアレかな?

『彼は間違いなく日本晴れで俺の水技の威力を下げてくる。
加えて、体力が少なくなれば朝の陽射しで回復するだろうね』

『なるほど、となるとあの巾着袋の中身は"アレ"ですか。
マスター、私は貴女の判断に従います』

「うん……ありがとう。璃珀、まずは天馬君にハイドロポンプ!」

『任されたよ』

璃珀さんが大量の水を大砲のように噴射する。

その水は天馬に向かって真っ直ぐ飛んで行った。

「青刃、サイコキネシスで軌道を変えるんだ!」

『イェス、マスター!』

青刃の目が青く光り、ナオトの言葉の通りにハイドロポンプの軌道を変える。

そして緋翠君に大量の水が襲いかかり、ずぶ濡れになってしまった。

水も滴る……うん、これ以上はやめておこう。

そして璃珀さんの予想通り、ナオトが天馬に日本晴れを指示。彼のハイドロポンプは威力を落とす形になった。

「緋翠、大丈夫!?」

『えぇ、これくらいどうということはありません』

『しかし驚いたね。ルカリオもサイコキネシスが使えるとは思わなかった。
案外、緋翠君と"似た者同士"なのかもしれないよ?』

「璃珀、今はバトル中だから集中してね! 緋翠、光の壁!」

『かしこまりました!』

緋翠君が光の壁を展開し、特殊技に強い状態を作る。

青刃にとっては、少し厳しいかもしれないな……。

『特殊技を先に対策してきたか……。
光の壁が切れるまでは任せるぞ、天馬』

『OK! サポートはよろしく、青刃!』

「天馬、飛び跳ねるだ! 緋翠を狙うぞ!」

天馬が大きくジャンプして、緋翠君に狙いを定める。

でもユイはマジカルシャインの光を目眩しとして使ってみせた。

マジカルシャインは全身から激しい光を放って攻撃する、フェアリータイプの技。

炎タイプの天馬にはあまり効果が無いけど、相手の攻撃を阻止するには十分な効果だ。

ついでに言うと全体技なので、当然青刃もダメージを受ける。

「天馬君が物理で、青刃君が特殊か……。
だったら緋翠、リフレクター!」

『はい!』

リフレクターと、光の壁。2つの壁による"目に見えない要塞"が完成してしまった。

加えて璃珀さんは自己再生を覚えているし、緋翠君も癒しの波動もある。

このバトル……かなりの長期戦になりそうだな。

「青刃、璃珀に波導弾!」

『イェス、マスター!』

「緋翠、サイコキネシス!」

『マスターのご命令とあれば!』

青刃の放った波導弾は璃珀さんに向かって飛んでいくも、緋翠君のサイコキネシスで軌道を変えられてしまう。

そしてそれは天馬の顔面に命中した。

『青刃、気を付けギャッ!?』

『天馬!?』

『フフッ、先程のお返しですよ』

『顔面とはなかなか容赦が無いね、緋翠くん?』

い、痛そう……。

それに緋翠君のあの顔に、あの言葉……。もしかしなくても狙ってやったね?

「やってくれるな、緋翠。……まだ陽射しはある。
天馬、もう1度飛び跳ねる!」

『分かった!』

「わっ、体力を回復する気だ! 璃珀、天馬君にハイドロポンプ!」

「朝の陽射し!」

ナオトとユイ。2人の指示が飛んだのは、ほぼ同時だった。

太陽の光を受けて白く輝き始めた天馬にハイドロポンプが直撃。

まさに"撃墜"とも言えるその様子に、少しだけスナイパー映画を見ているような気持ちになった。

日本晴れで威力が落ちているとはいえ、璃珀さんの持つ神秘の雫がプラマイゼロまで押し戻しているように思える。

『天馬の体力が著しく低下しています。マスター、ご判断を』

「……よし、"あの手"を使おう。行けるな、青刃?」

『はい、お任せください』

「"あの手"……?」

『ご主人、気を付けて。何か仕掛けてくる気だよ』

「青刃、天馬の背中に乗れ!」

「えっ!?」

動揺したユイの声がフィールドに響く。

ルカリオは鋼・格闘タイプだ。炎タイプの天馬とは、本来であれば相性が悪い。

驚くのも無理は無いだろう。事実、私もナオトが何をしようとしているのか読めてないから。

ナオトの指示を受けた青刃が天馬の背中に飛び乗る。その姿は王族に仕える騎士を彷彿とさせるようだった。

「あ、あれ? 燃えてない……?
熱くないのかな、青刃君……」

『ポニータとギャロップのたてがみは、心から信頼する相手にのみ熱さを感じさせないと聞きます。
それにしても、一体何を……』

緋翠君の戸惑っているような声が聞こえた瞬間、天馬がバトルフィールドを縦横無尽に走り始めた。

ポケモン図鑑によれば、ギャロップの最高速度は時速240km。並のポケモンでは目視で追いつくことはほぼ不可能だ。

あとあまりの速さに青刃が振り落とされないかとか、研究所の花壇とか建物に激突しないかとかは見ていて少しハラハラする。

「……よし、今だ青刃! そのまま"癒しの波動"!」

「癒しの……えっ!?」

青刃が発した癒しの波動が天馬を包み、虹色に光り輝く。

その柔らかな光は天馬の姿を幻想的に演出してみせていて、私もついホゥと息を吐いてしまう。

ナオトたちは特別意識したつもりは無いんだろうけど、コンテストバトルでも通用しそうだなぁ。

「ル、ルカリオって癒しの波動覚えるの!?」

「驚いたかい? でも呆けている場合じゃないと思うよ。
青刃、背中から降りるんだ! 天馬はフレアドライブで突っ込め!」

『イェス! 行け、天馬!』

青刃が天馬の背中からヒラリと飛び降りる。そして天馬は灼熱の炎をまといながら、緋翠君と璃珀さんに向かって走っていって。

フィールドの1点に集められてしまっていた2人にすさまじいスピードで突っ込んだ。

そして長かった強い陽射しは終わりを告げ、天馬に有利な舞台設定も無くなってしまった。

『うっ……あ……っ!』

『ぐっ! ……うっ……!』

「緋翠、璃珀!」

「畳み掛けるぞ! 青刃、緋翠にラスターカノン!」

「回復は間に合わないから……璃珀、緋翠の前でミラーコート!」

『……了解した。緋翠くん、俺の後ろから動かないでくれよ』

不思議な光で全身を包んだ璃珀さんが、ラスターカノンを真っ向から受け止めた。

そして威力の上がったその攻撃を、2倍にして跳ね返す。

正面から反撃を受けた青刃は吹き飛ばされ、エスパータイプの技ということもあって限界まで体力を減らされてしまった。

何とかギリギリで耐えたみたいだけど、足元が少しフラフラしている。

「追撃するよ、緋翠! マジカルシャイン!」

『はい!』

緋翠君の体が再び眩しいほどの輝きに包まれる。

その光が直撃した青刃がゆっくりと倒れ、天馬も陽射しが無くなったことで威力を取り戻したハイドロポンプを受けて倒れた。


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