01
ユイからの誘いでナナカマド研究所を訪れた私たち。
久しぶりに会った彼女とダブルバトル形式でのフルバトルをすることになり、激戦を繰り広げたのが昨日のこと。
ユイも5つ目のジムバッジを手に入れたということもあって、戦略の立て方や技を使うタイミングの計り方がとても上手くなっていて。
もしかしたら、今回は負けるかもしれない……本気でそう思った。
名実ともに実力派トレーナーへ成長しているのを見て、自分のことのように嬉しく思ったのがついさっきのことだ。
中でも著しい成長を遂げたと思ったのは、やっぱり紅眞君。
諸々の事情もあって彼1人でノモセジムを戦い抜くために、ティナちゃんにものすごく鍛え上げられたって言ってたっけ。
確かにあの子の種族柄とノモセジムが水タイプのジムということを考えれば、これ以上の指南役はいないだろう。
マキシさんも手持ちにギャラドスを入れているくらいだし、対策は万全に整えておくに越したことはない。
厳しいトレーニングを乗り越えたからこそ掴めたジムバッジなのだと、ユイは嬉しそうに笑って。
そしてその夜、みんな仲良くナナカマド研究所に宿泊させてもらったのだった。
「カレー美味しかったー! ごちそうさまでした、緋色君!」
「あいよ、お粗末さん。
片付けは俺らでやっとくから、今日バトルしたヤツらはもう寝ちまいな」
「おっ、良いのか? じゃあお言葉に甘えるかー」
紅眞君が全身で伸びをしながらそう答える。
確かに今日はみんな頑張ってくれたし、ベッドに入るにも良い時間帯だ。
お腹いっぱいになったからなのか、笑理とメイちゃんも眠そうにウトウトと船を漕いでいる。
「笑理、メイちゃん。寝るならここじゃなくてベッドに行こうね」
「「はぁ〜い……」」
「おい、優男」
各自が眠る準備を始めた時、不意に晶君がナオトを呼ぶ。
意外な人物に声を掛けられたことに驚く様子を見せながらも、ナオトは晶君の方に向き直った。
「何だい、晶?」
「まさかとは思うが、僕たちが甘味女とバトルしたくらいで満足したと思ってはいないだろうな?」
そう言いながら、晶君は好戦的な笑みを浮かべてナオトを見る。
その視線と言葉の意図に気付いたのか、慌てたようにユイが声を掛けるのと同時に碧雅君が小さなため息をついた。
「ちょっ、ちょっと晶!?」
「僕"たち"ってこっちを巻き込まないでくれる、バトル馬鹿」
「でもいーじゃん! 俺、天馬とも1回戦ってみたかったし!」
「俺もお前たちとは1度戦ってみたかった。
昨日はユイの希望もあってレイナに譲ったが、挑戦状を叩き付けられたからには引き下がる訳には行かないな」
お、おぅ……。疾風がいつになく楽しそう……。
前々からユイたち……特に晶君と戦ってみたいとは言ってたけど、まさかこんなに早く機会が巡ってくるなんて。
"疾風たちはまた次の機会に"と言ったのが、明日のことになりそうな雰囲気だ。
「ナオトちゃんたちも、わっしょーいする?」
「まだ本格的に対戦をしたことが無い分、彼らの実力は未知数だ。
レイナさんとのバトルでは俺たちの方にアドバンテージがあるけど、ナオトくん相手となると逆にこちらが不利だからね」
「それに鋼タイプのポケモンを多く連れているナオト様と戦うことは、マスターにとっても良い経験になるかと。
ミオシティのジムリーダーは鋼使いだと聞きますから」
確かにナオトの手持ちは鋼タイプが半数を占めている。
私たち……特に誠士と勇人にとって鬼門である碧雅君と緋翠君、白恵君に相性で有利だ。
それにミオジムのトウガンさんはハガネールを手持ちに入れてるし、緋翠君の言う通り色々と勉強になるんじゃないかな。
「ったく、相変わらず血の気の多い小僧だぜ」
「まぁ良いじゃねぇか、銀嶺。俺らもたまにゃ体動かさねぇと鈍っちまうぞ?」
「私としても奥様とユイ殿とのバトルは見ているだけで良い刺激になった。
マスターが挑戦を受けると言うのであれば、無様な姿は見せられないな」
「青刃はずっとレイナ撮ってただけじゃん……。ふぁぁ……」
「俺も賛成ー! ナナカマド博士も色んなポケモンのデータがある方が喜ぶだろうし、レイナだってナオトのカッコイイとこ見たいでしょ?」
「天馬!? いきなり何言い出すの、もう!」
"真っ赤な顔で言われても説得力無いよ"と笑う天馬をジト目で睨む。
そりゃあ私だってナオトがバトルするところ見たいけども! すごく見たいけども!
「うし、じゃあ明日は俺と誠士でビデオ回すか」
「そうだな。だがその間、メイはどうする?」
「私と笑理で、研究所のポケモンたちと遊んでくるよ。
メイには明日の朝にそう伝えるね」
トントン拍子に話が進んでいく隣で、ユイがオロオロしている。
ナオトが"自分も1度はユイたちとバトルしてみたかったんだ"と伝えると、彼女は困ったように笑いながら了承した。
「……決まりだな。では晶、君の挑戦を受けよう。
万全を期すためにも、今日はもう眠ると良い」
「フン、せいぜい首を洗って待っているんだな」
晶君が擬人化を解いて自分のボールに入っていく。
その様子を見送った後、今度こそ各自が眠る準備を始めたのだった。
[*prev] [next#]
TOP