02

「あの、もし……」

突然かけられた声に驚いて振り返ると、そこには紫色の着物を着た女の子が立っていた。

「えと、私ですか……?」

「はい、突然申し訳ありません。よろしかったら、こちらをどうぞ」

女の子の持っていた紙袋を受け取って中身を見る。

「え、これ……もしかしてミアレガレット!?」

袋の中にはミアレガレットが6個も入っていた。

焼きたてなのかとても温かい。

「実は、皆様の会話が聞こえてしまいまして……。
御三方の様子を見るに、他の地方からいらしたのではありませんか?」

ご、ご名答すぎて言葉が出ない。

「何で僕らが他地方から来たって分かったの」

「カロスに住む方であれば、ミアレガレットを知らない方はいませんので」

「で、でも本当に貰っても良いんですか? 誰かに頼まれて買ったものなんじゃ……」

「私は次の機会にでも購入します。
事情を話せば友人たちも納得するでしょうし、せっかくカロスまでいらしたのですからどうぞお召し上がりくださいまし」

「ありがとうございます! 大事に食べますね」

「ありがとうな、着物の姉ちゃん!」

着物の少女は"どういたしまして"と穏やかに微笑むと、踵を返して悠然と立ち去って行った。

その様はとても上品で、どこかの名家のお嬢様と言われても納得するしかない自信がある。

あ、名前聞くの忘れたな……。

「なぁなぁ姉ちゃん、早くミアレガレット食べようぜ!」

紅眞に催促されながらミアレガレットを1口かじり、優しい甘さに舌鼓を打った。





「ただいま戻りました」

「あ、おかえり。……あちゃー、ミアレガレット売り切れだった?」

「いえ、実は他地方からいらした方にお譲りしましたの」

「他地方ってことは、観光客かな? 気に入ってくれると良いね」

「そうですわね」


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