09

「もう、ユイったら……。新しいことに夢中になるのは良いけど、あたしたちを放ったらかしにするなんてね」

碧雅たちと一緒に駆け出して、そこそこ離れた場所で楽しそうに話をするユイを眺める。

ふと"ティナちゃん"と呼ばれてそちらを見れば、レイナが笑って立っていた。

「隣、良いかな?」

「えぇ、どうぞ。
……レイナ、今日は本当にありがとう。とても楽しかったわ」

「良かった。そう言ってもらえるなら頑張った甲斐があったよ」

そう言って私を見るその表情や雰囲気は、とても穏やかで……。

失礼だとは思うのだけど、シンオウのジムを全て制覇した強者とは思えない。

彼女のポケモンたちはきっと……この陽だまりのような暖かさに惹かれるものを感じたのだろう。

だからこそ、焔たちはレイナの期待に全力で応える。例えそれが自分のイメージと離れたものだったとしても……。

(私には、少し眩しいわね……)

私は自分を日陰者だと思ったことは無いけれど、ユイがレイナに話したように自分の種族にコンプレックスを持っているのも事実だから。

「そういえば……。あたしの事情、ユイから多少は聞いてるんでしょう?
"思うところがあった"って、どういう意味だったのかしら?」

私の言葉に、レイナは"うーん、私も上手くは言えないんだけど……"と前置きする。

彼女の口から語られたのは、誠士という名前らしいガブリアスの話。

聞けば彼も生まれつきのポテンシャルの影響で力(攻撃力)が高く、住処のポケモンたちから恐れられていたそうだ。

「でもね、誠士はその力で何度も私を助けてくれた。ジム戦を勝利に導いてくれた。
ありのままの自分を受け入れて、その上で私に力を貸してくれる。
だからって訳じゃないし、無理に原型に戻ろうとする必要は無いけど……。"自分らしく"生きてみても良いんじゃないかな?」

「自分、らしく……」

できるのかしら、私に……?

「ヨスガジム・ジムリーダーのメリッサさんって知ってる?
前にコンテストのエキシビションに出てて、こう言ってたんだ。
"ポケモンコンテストは愛しのポケモンの魅力をアピールする場所。バトルが強い、弱いは関係無い。
コンテストではどんなポケモンでも輝くチャンスがある。だからアタシはコンテストが大好きデース"って」

思い返してみれば今日彼女が連れてきたポケモンたちは、がたいの良い子たちがほとんど。

でも確かに、彼らのパフォーマンスはここにいる全員を魅了した。

"魅せる"ことに……種族は関係無いんだ。

「私、思うんだ。コンテストって"美しさ"とか"可愛さ"にフォーカスが当てられがちだけど、それだけじゃない。
そのポケモンの持つ個性や特徴を最大限に活かして、輝かせてあげる場所なんじゃないかなって」

"ゴメンね、やっぱり上手く言えないや"と、レイナが苦笑いしながら頬を掻く。

彼女の言葉にあたしを励まそうとしているような雰囲気を感じて、それを素直に嬉しく思っている自分がいた。

「あたしにも、できるかしら……? いつか、自分らしくいられるようになるかしら……?」

「大丈夫だよ。今すぐには無理でも、ティナちゃんならきっと大丈夫。
あなたにはギャラドスたちがいるし、ユイたちもいるんだから」

「ありがとう、レイナ……。
ねぇ……1つお願いがあるんだけど、その……。
あたしと、お友達になってくれる……?」

「もちろんだよ。改めてよろしくね、ティナちゃん」

レイナが差し出した手を、そっと握る。

その手の暖かさは、あたしの心をも暖めてくれるようだった。

「レイナー、ティナちゃーん! さっそくパフォーマンス思い付いたんだけど、ちょっと見てくれない?」

「うん、分かった! ナオト、ユイがパフォーマンス見て欲しいって!」

「あぁ、今行くよ!」

「ティナちゃんも行こう。ユイのパフォーマンス、楽しみだね!」

「……えぇ、そうね!」

ユイにレイナ、ナオト……そして彼らのポケモンたち。

どうかこの良い縁が末永く続きますように。

そしていつか……"自分らしく、ありのままのあたし"で、彼女たちと笑い合えますように。


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