08

エキシビションということで、制限時間を過ぎた時点でバトルを終えた2人。

どちらも1歩も引かない良いバトルで、私も今後の良い勉強になったように思う。

「ポケモンの魅せ方って、ホントに色々やり方があるんだね」

「あたしも雷のキバにあんな使い方があるなんて思いもしなかった。
コンテストバトルって、奥が深いのね……」

「僕も今までコンテストは観るだけだったから、良い経験になったよ」

「フフフッ。……あ、そうだ。
ねぇユイ、緋翠君にうってつけだと思うパフォーマンスがあるんだけど見てみない?」

「わ、私に……ですか?」

緋翠が困惑した表情で私の方を見る。

この子に似合うパフォーマンスかぁ……。それはそれですごく興味ある!

「見たい見たい! 緋翠、嫌なら無理にとは言わないけどやってみない?」

「マスターのお望みとあれば……。よろしくお願いします、レイナ様」

「オッケー。じゃあちょっと緋翠君を借りるね」

擬人化を解いた緋翠がレイナについて歩く。

私たちから少し離れたところに移動すると、くるりとこっちを振り向いた。

「……ここなら良いかな。緋翠君、自分を包むようにリフレクターを展開ってできる?
ドーム状にできたら1番良いんだけど」

「今までそのように張ったことが無いので、何とも……。
でも、やってみます……!」

緋翠が1つ深呼吸して、リフレクターを発動する。

レイナの言う通りドーム状に展開されたそれは、まるで光の要塞みたいだ。

「良い感じだよ、緋翠君! そのまま踊ってみて」

『お、踊りですか!? ……いいえ、怖気付く訳には行きません。
この演技を見て、マスターが笑顔になるのであれば……!』

緋翠がリフレクターのドームの中で、優雅に踊る。

クルクルと回ったり、ジャンプしたり。その姿はまるでバレリーナのようで、見ている私たちも何だか楽しくなった。

「……そろそろかな。緋翠君、ドームの真ん中でマジカルシャイン!」

『は、はい!』

マジカルシャインの光が、リフレクターのドームを押していく。

はち切れんばかりに膨れ上がったところでヒビが入り、ドームは木っ端微塵に砕け散った。

(わぁ……!)

"砕け散った"と言っても、レイナはただドームを壊した訳じゃなかった。

空気中に散るリフレクターの破片が、光を揺らめかせながら緋翠に降り注ぐ。

その光は緋翠の美しさを際立たせ、私たちをおとぎ話の世界に連れていってくれるような気持ちにさせてくれた。

レイナの指示で、緋翠が優雅にお辞儀する。

気が付けば私たちは緋翠に拍手を送っていた。

「緋翠、すっごく綺麗だったよ! 感動しちゃった!」

「いかにも"フェアリー"って感じで、スッゲー良かったぜ!」

「すーちゃん、ようせいさんみたいだったー」

「みたいっていうか、妖精でしょ一応」

「フン、ドラゴンタイプの僕にとってフェアリータイプは天敵だが……まぁ、悪くなかった」

「初めてのパフォーマンスとは思えないレベルだったね。
ご主人と一緒にグランドフェスティバルを目指しても良いんじゃないかい?」

『……初めての体験でしたが、とても楽しかったです。
それに何より、マスターに喜んでいただけたことが1番の報酬ですから』

緋翠がニコニコと嬉しそうに笑う。

その笑顔を見ていたら、なんだか私もパフォーマンスを考えみたくなった。

「よし! 時間が許す限り、パフォーマンス考えてみようかな。
みんなで一緒に考えようよ!」

「はぁ? 急に何を言い出すかと思えば……。
僕はコンテストに興味はな……」

「ユイ、あたしもやりたーい! ほら晶も早く行こうよ!」

「なっ……引っ張るな、おしゃまリス!」

「俺はさっきの勇人みたいにカッケー合体技使ってみてぇなー!」

「きらきら〜、くるくる〜」

「そもそも僕らコンテスト経験無いのに、パフォーマンスなんてアイデア出るわけ?」

「まぁまぁ。"3人寄ればフーディンの知恵"とも言うし、たまにはこういうのも良いんじゃないかい?」

ポケモントレーナーとして活動していれば、コンテストに出場することもある……かもしれない。無いかもしれない。

でもみんなで何かを作り上げること、みんなで目標を達成できた時の喜びを……私たちはよく知っているから。


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