07
「レイナ、こっちは準備OKだよ」
「分かった。じゃあ始めよっか!」
リッシ湖の畔に向かい合って立つレイナとナオト。
私の隣ではティナちゃんが"普通のバトルとどう違うのかしら?"って楽しみにしてるのが伝わってくる。
実のところ、私もワクワクしてる。
レイナのコンテストバトルを見るのは初めてだし、彼女を相手にナオトがどんなバトルをするのかすごく気になるし!
「澪、アドミッション!」
『了解』
「銀嶺、レッツゴー!」
『ハァー、しゃあねぇなぁ』
「えっ……えぇっ!?」
バブルシールとロックシール。それぞれを纏いながら現れたのは、澪君と……なんと銀嶺さん。
焔君と勇人君の組み合わせも意外だったけど、この組み合わせも予想外だぞ……。
「ぎんちゃんもみっちゃんもがんばれー」
『"ぎんちゃん"だぁ?』
『"みっちゃん"なんて初めて呼ばれた……』
「2人とも、今はバトルに集中してね。白恵君、応援ありがとう」
「見た目は完全に"美女と野獣"だよね」
『誰が野獣だ。聞こえてんぞ、碧雅の小僧』
「銀嶺、噛み付くな。……それじゃあレイナ、お手柔らかに頼むよ」
レイナがコクリと頷いて、ピリッとした空気になる。
私も無意識に息を飲み、握る両手に力を込めた。
「先手はこっちから行くよ! 銀嶺、ステルスロック!」
「ステルスロックだと……?」
ステルスロックによって生み出された岩が、澪君の周りを取り囲む。
でもナオトは取り乱すこと無く澪君に冷凍ビームを指示した。
噴水のように打ち上げられた青い光線が岩を凍らせて、砕く。細かい破片がキラキラと光って、澪君の青い体の美しさを際立たせていた。
「上手くいったようだな」
「やるね、ナオト。スピードでは澪の方が上……それなら!
銀嶺、ロックカット!」
ロックカット……確か体を磨くことで空気抵抗を無くして、スピードをぐーんと上げる技だよね。
前にフユカとシャッフルバトルした時、悠冬君が使ってたやつだ。
悠冬君は岩タイプだけど、銀嶺さんは鋼タイプ。磨かれた鋼鉄の体が太陽の光を反射して白銀色に輝いていた。
……ちょっと眩しいけど。
「レイナさんも、流石は優勝経験者だね。鋼タイプのポケモンの魅せ方をよく分かっている」
「澪、水の波動!」
『了解』
澪君の放った水の波動が、銀嶺さんに向かって真っ直ぐ飛んでいく。
それを見たレイナは……不敵な笑みを浮かべた。
「その水の波動、もらうよ! 銀嶺、雷のキバで噛み砕いて!」
『そらよっ!』
銀嶺さんが、その強靭な顎で水の波動を噛み砕いてしまう。
その衝撃で飛び散った水滴が光の粒子となって降り注ぐ。そしてそれは銀嶺さんとその周りをキラキラと彩った。
ゴツいけど、美しい……。その堂々とした姿は見る者を圧倒させ、魅了する。
自分の喉が、たった今呼吸を思い出したかのようにハクリと動くのを感じた。
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