06

「い、いよいよなのね……」

「なんで師匠が緊張するんだよ」

「テレビで見るのと生で見るのとでは、迫力が違うと言うでしょう?
でもあの坊やたち、申し訳ないけれど"コンテスト"ってイメージではないような……」

「まぁ、確かに。焔はともかく、勇人はコンテストとは無縁だろうね」

「シーッ、始まるみたいだよ」



「焔、勇人! レッツゴー!」



上空に投げ上げられたボールが開き、中から大きな炎と風の壁が飛び出して空中に留まる。

自身の体を包んでいるそれを弾けさせて、焔君と勇人君が着地した。

「焔、フレアドライブ! 勇人、ドラゴンクロー!」

『よっしゃ!』

『任せて!』

激しい炎を纏った焔君と爪を青緑に光らせた勇人君が向かい合い、真っ直ぐ飛び掛っていく。

そして2人が至近距離ですれ違うと、勇人君の大きな爪が炎を纏った。

「おぉー、スゲー! あれカッケー!」

「うん、ダブルパフォーマンスならではだね。名付けるなら"炎のドラゴンクロー"って感じかな?」

「何そのネーミングセンス」

「ゆーちゃん、カッコイーよー」

炎のドラゴンクロー(璃珀命名)を保ったまま、勇人君が空で旋回する。

焔君に狙いを付けると、今度は猛スピードで滑空した。

「焔、インファイト!」

『了解!』

焔君の拳と勇人君の爪が激突する。

その激しいぶつかり合いによって炎が弾け、オレンジ色の光の粒子となって散っていく。

間合いを取るように距離を離した2人の体をキラキラと彩った。

「うん、良い感じ……! 大技行くよ2人とも!
勇人、焔を乗せてテイクオフ!」

『おぅよ!』

勇人君が焔君を乗せて空高く飛んでいく。

ベストポジションまで行ったのか、焔君が勇人君の背中から跳躍した。

「焔、大文字!」

空中でドリルのように体を回転させながら、下に向かって炎で大きな円を描く。

大文字……焔君、新しい技を覚えたんだぁ。

勇人君のトレーニングに付き合う頻度も回数も1番多いってレイナから聞いたし、最終進化しても成長できるってことなのかも。

……晶、今ちょっと"うずっ"としたよね? 今日は我慢だよ、バトルはまた今度。

「決めるよ、勇人! 目覚めるパワー!」

焔君と同じように回転しながら、炎に向かって空色の光の玉を下から撃ち込む勇人君。

あの光の玉の効果なのか炎はどんどん大きくなっていって。最後には大きく破裂して、打ち上げ花火みたいな光のシャワーが降り注ぐ。

そしてその下で焔君と勇人君が決めポーズでフィニッシュ。

す、スゴい……。これだけのパフォーマンスを、ホントに3日で完成させちゃうなんて!

「わぁ、綺麗! ねっ、ティナちゃ……ティナちゃん?」

「……」

ティナちゃん……言葉失って固まってる?

というか、なんか魂抜けたみたいに呆然としてる気がするんだけど!?

「ティナちゃん!? 大丈……」

「スゴい……。本当にスゴイわ、レイナ!
あたし、こんなにドキドキしたの初めて!」

ティナちゃんが大きな声でレイナたちのパフォーマンスへの感想を口にする。

少し蒸気した頬、ニッコリと口角の上がった口元。そして、輝かんばかりの赤い瞳。

彼女の心が浮き立っているのは、誰の目にも明らかだった。

『おい見ろ! お嬢が満面の笑みだぜ!』

『あんな嬉しそうな顔見たの、いつ以来だろうなァ!』

確かに、あんなにキラキラした笑顔を見るのは私たちも初めてかも。

でも喜んでくれてるみたいだし、やっぱりレイナに頼んで正解だったなぁ。

「ありがとう、ティナちゃん。
突貫コースの練習だったからちょっと不安だったけど、上手くいって良かった。
焔と勇人もお疲れ様。おかげで良いパフォーマンスになったよ」

『良いってことよ。何だかんだ、俺らも普段やらねぇことできて楽しかったしな!』

『うん。コンテスト系は笑理と來夢に任せがちだけど、たまには良いね』

「やっぱり生で見るのは迫力が段違いだわ。
今日はとっても素敵な経験をさせてもらっ……」

「ストーップ、ティナお姉ちゃん! まだ終わりじゃないよ!」

「えっ?」

笑理ちゃんの言葉に、ティナちゃんが目をパチクリと瞬かせる。

ど、どういうこと? もしかして次は笑理ちゃん……は、可能性低いか。

「ん? まだ何かあるのか?」

『次はレイナとナオトのコンテストバトルだよ』

「コンテストバトル……って、ナオトが!?」

い、意外……。ナオトもコンテストとか興味あるんだ?

「……ナオト様。もしや自分から立候補したのではなく、レイナ様に協力をお願いされたのでは?」

「あぁ、まぁ……。レイナの頼みとなると断れなくてね」

「しれっと惚気を挟むな、優男」

「レイナにはパフォーマンスだけ頼んでたと思うんだけど、なんでコンテストバトル?」

「ユイからティナちゃんの事情を聞いた時、ちょっと思うことがあって」

「えっ、あたし?」

「ティナちゃん、自分の種族にコンプレックス持ってるみたいって聞いたから。
完全に払拭することはできなくても、少しでも自分のことを好きになる手助けになればなって。余計なお節介なのは分かってるけど」

不思議そうな顔をするティナちゃんに、レイナが微笑む。

その笑顔はとても穏やかで、包み込んでくれるような暖かさを感じるものだった。……聖女かな?


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