04
「そう……。じゃあもう旅を終えて、今はナギサシティに住んでるのね」
「そうだよ。私の生まれ故郷なんだ。
ミオシティ程じゃないけど海に囲まれてるし、良かったらティナちゃんも来てみない? 案内してあげるよ」
「嬉しいけど、気持ちだけ受け取るわ。
あの街のジムリーダーって電気タイプの使い手でしょう? 街自体も電気が多いから苦手なのよね……」
「あー、やっぱり……。
確かに前よりは落ち着いたけど、改造癖治らないんだよねー、デンジお兄ちゃん……」
グランドレイクからリッシ湖まで移動する間、他愛ない世間話をしながら歩く。
私がティナちゃんと出会ったきっかけや、ノモセジム前の猛特訓の話とか色々と楽しく話す。
とはいってもティナちゃんとレイナたちの親交を深めるのが目的なので、私は基本的に聞き専だ。
事前にティナちゃんの事情を(差し支えない範囲で)話していたおかげか、レイナたちも彼女の素性に関しては深入りせずに話を進めてくれて。
レイナとナオトが原型の言葉を理解できることも、私の方からティナちゃんに伝えてある。
なんか、これならすぐに仲良くなれそうじゃない?
「さぁ、着いたわ。お前たち、お客様よ!」
ティナちゃんが湖面に向かって声を張り上げる。
すると湖で暮らすギャラドスさんたちが一斉に水中から出てきて、空に向かってハイドロポンプを打ち上げた。
そこへ別グループのギャラドスさんたちが竜巻をぶつけ、大量の水を巻き上げる。
空中で霧散した雫がキラキラと太陽の光を反射し、大きな虹が姿を現した。
「わぁ、何今の!? スゴい!」
「キレーイ!」
『うん、タイミングも技の精度もバッチリだ。勉強した甲斐があったね、ご主人?』
「えっ、あれユイが考えたの!?」
そう。今ギャラドスさんたちが披露したパフォーマンスは、私が四苦八苦しながら考えたもの。
コンテストの雑誌とか動画とか色々見て勉強して、彼らにお願いしてたんだよね。
「エヘヘ。レイナには負けるかもしれないけど、ちょっとやってみようかなって思って。
璃珀は竜巻覚えられないから、ここのギャラドスさんたちに協力してもらったんだ」
『おぅおぅ! お前がユイの言ってたレイナか!』
『ゆっくりしていけや! 歓迎するぜ!』
「う、嬉しいけど圧がスゴい……!」
私たちが初めてここへ来た時みたいに、ギャラドスさんたちが一斉に集まってきてレイナに声を掛けている。
……うん、レイナの言う通り圧が強い。私たちの時の3割増しくらいな気がする。
『お嬢にどんどん友達ができてくのは嬉しい限りだが……。そっちの黒毛の優男は何もんだ?』
ギャラドスさんたちがジーッと見ている(いや、睨んでる?)のは、ナオトだ。
さすがの彼もギャラドスの睨み顔は身がすくむのか、ほんの少しだけ口元が引きつっているのが見える。
「お前たち、客人……それもユイの友人への無礼は許さないわよ。ちょっと耳を貸しなさい」
素直に顔を下げたギャラドスさんたちに、ティナちゃんがヒソヒソと何かを耳打ちする。
さっきも話した婚約……つまり2人が"番になる約束をした仲(意訳)"ってことを話してるんだろうな。というか、ギャラドスの耳ってどこにあるんだろう?
やがて大きく見開かれたギャラドスさんたちの目が、レイナとナオトを映した。
『おいおい、お前らそういう関係なら早く言えってんだ!』
『俺ぁ、てっきりお嬢のこと狙ってんのかと思ったぜ!』
『まぁ、なんだ。疑って悪かったな、ナオト!』
「ご、誤解が解けたなら何よりだよ。
……僕にとって"大切な恋人"は、レイナだけだからね」
"ヒューゥ! おアツいなぁ!"って盛り上がってるとこ悪いんだけど、そろそろ本題に入りたいなぁ……。
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