03




「あっ、来た! おーい、こっちこっち!」



遠くの方に見えたレイナとナオトに手招きする。2人仲良く歩いてくるその姿は、まるで新婚夫婦みたいだ。

……なんて言ったら、"まだ婚約中なんだってば!"って顔真っ赤にしそうだから言わないけど。

「久しぶり、ユイ! と……そっちの子が例のお友達?」

「うん、ティナちゃんっていうんだよ」

「初めまして、ティナよ。遠いところごめんなさいね」

「よろしくね、ティナちゃん。私はレイナで、隣の彼はナオト」

「初めまして、ティナ。ユイも元気そうで良かったよ」

私たち3人は久しぶりということもあって、キャイキャイと再会を喜び合う。

レイナの後ろには焔君と勇人君、ナオトの後ろには澪君と銀嶺さんが立っていて。

レイナの肩の上には笑理ちゃんが原型の姿で乗っている。……定位置なのかな。

「今日は來夢ちゃんたちは一緒じゃないんだね」

「うん、あんまり大勢で押し掛けるのも迷惑かと思って……。
メイちゃんのこともあるし、お留守番頼んできたんだ」

「あら、その子たちの他にも仲間がいるのね」

「この2人すごいんだよー?
ナオトはジムバッジを7つ持ってて、レイナは全制覇してるんだから!」

「へぇ、どおりでしご……トレーニングしがいのある訳だわ。
ところで……あなたたち2人はどういう関係なの?」

ティナちゃんの赤い瞳に見つめられ、突然ドギマギし始めるレイナ。

その隣ではナオトが息を吐くようにレイナの肩を抱き寄せて、"僕と彼女は婚約中なんだ"と笑った。

さっすがイケメン、何やっても様になってる。でもレイナが隣で顔真っ赤になってるんだけど。

「こんやく……って、何かしら? こんにゃくとは違うのよね?」

『ね、姉さん……。婚約っていうのは……』

『"番になる約束をすること"って言えば分かるでしょ』

「番に……えっ!?」

ティナちゃんが頬を赤らめ、レイナとナオトを交互に見る。

向こうも碧雅の声が聞こえたのか、レイナが"碧雅君!"と悲鳴じみた声を上げる。

当の本人は何処吹く風って感じだし、晶は"実際そうなのだから間違いではないだろう"と呆れ声だ。

「ごっ、ごめんなさいレイナ! そ、そういう込み入ったことを聞くなんて不躾だったわ」

「う、うぅん大丈夫大丈夫! 晶君の言う通り間違っては……ない、し……」

だんだんと尻すぼみになっていくのを見ていて確信する。

マズイ……このままじゃレイナが羞恥で パフォーマンスどころじゃなくなっちゃう……!

「ティナちゃん、その話はとりあえずストップ!
……ちょっと紹介が遅れたけどパチリスの笑理ちゃんとゴウカザルの焔君。
それからボーマンダの勇人君にシャワーズの澪君。最後にハガネールの銀嶺さん」

一通り彼らの名前を紹介すると、笑理ちゃんがレイナの肩から飛び降りて擬人化する。

トテトテとティナちゃんに近付くと、ニッコリと笑った。

「笑理だよ! 初めまして、ティナお姉ちゃん!」

「"お姉ちゃん"……」

天使のような笑顔で"お姉ちゃん"……それは反則だよ笑理ちゃん! 私もキュンってしちゃう!

ティナちゃんもその響きにジーンと来たみたいで、"何この愛らしい子は!"と笑理ちゃんを抱き締めた。

『お前の馬鹿力ではおしゃまリスが潰れるぞ、怪力女』

『バッカ! 師匠にんなこと言ったら……!』

「ふぅん? 良い度胸ね、晶。
良いわ、明日する予定のトレーニング量を倍にしてあげる」

フフフ、とティナちゃんが綺麗な笑顔で笑う。
でも彼女の赤い瞳だけはちっとも笑ってない。怖……。

「馬鹿力だぁ? あの細ぇ腕にそんな力があるたぁ思えねぇがなぁ」

「言ってくれるじゃない。お望みならDDラリアットの模倣でもご馳走しましょうか?」

「……ハッ。俺を見て怖がらねぇなんざ、随分肝の据わった小娘だぜ」

「ギャラドスたちに囲まれて暮らしているから慣れっこだもの。
残念だったわね、ハガネールの"おじ様"?」

「ちょっ……! 待って待ってティナちゃん!
銀嶺さん、口は悪いけど優しい人だから!」

「銀嶺、お前も煽るんじゃない!」

グッと握り拳を作ったティナちゃんを必死に宥め、なんとか矛を収めてもらう。

向かいではナオトが銀嶺さんに注意し、レイナが隣で苦笑いしていた。

危ない危ない……。本当にケンカになるかと思ったよ……。

「気を悪くしたならすまない、ティナ。銀嶺は元からこうなんだ。
何と言うか……素直になり切れないんだよ」

「おい、ソイツはどういう意味だ小僧?」

「大丈夫よ。あたしも7割は冗談だから」

ティナちゃんの言葉にホッと胸を撫で下ろすと同時に、あと3割は本気だったのかと戦慄する。

少しだけ波乱な対面を終えた後、私たちはリッシ湖へと向かうのだった。


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