01

「うーん……」

シンオウ地方・リッシ湖−−。

天気も良いし、散歩がてら近くの海辺まで来ていた私たち。

途中グランドレイクでティナちゃんとバッタリ会い、せっかくだからとリッシ湖まで移動して。

ギャラドスさんたちの豪快な大歓迎を受けた後、ティナちゃんのトレーニング指導の様子を見学させてもらっている。

ノモセジム戦に向けて紅眞を特訓してもらった時は、そのスパルタっぷりに驚いたけど……。

あの特訓があったからこそマキシさんに勝てたのも事実なので、それは本当に感謝しかない。

(でも……。ティナちゃん、あの時……)

前に璃珀のことをそれとなく聞こうとした時、確かに言っていた。



"あたしは戦うことより、魅せることをしたかった"−−。



ティナちゃんも女の子だし、着飾ることや可愛いものに興味があるのは分かる。

でも自分の原型を頑なに隠そうとするほどだ。(何をとは言わないけど)無理強いはしたくない。

一緒にショッピング? それとも、カフェでスイーツ?

「うーん……」

いや、待てよ……? "魅せる"?

今まで私はあまり縁が無かったけど、そういうことか!

"ポケモンが魅せる"といえばアレしかない!

「これだ!」

「キャッ!? ビックリした……。
いきなり大声を出してどうしたの、ユイ?」

「ぅえっ!? あっ、ティナちゃん!?
と、トレーニングはもう良いの?」

「どうしてあなたの方が驚いてるのよ……。
トレーニングは一旦休憩。詰め込み過ぎても良いこと無いから」

その割にはみんな(何故かギャラドスさんたちも)グッタリしてる気がするんだけど……。

あ、でも白恵はいつもの表情で"わぁ、つかれたぁ"ってちょこんと座ってる。

「それで? あなたがずっとあたしを見てるのは薄々気付いていたけど、何が"これ"なの?」

「あっ、気付いてたんだ……。
あの……さ、ティナちゃんは"ポケモンコンテスト"に興味無い?」

ティナちゃんの赤い瞳が見開かれ、キョトンとした表情になる。

でも次の瞬間には困ったように眉を下げて笑った。

「そうね。"興味が無い"と言えば嘘になるけど……。
でも良いの。あたしはコンテストには向いてない……それは分かってる」

「ティナちゃん……」

「それにあたしは行動範囲が限られているから、ホテルのテレビでしか見たことが無いの。
でも……もし生で見る機会があるなら、是非見てみたいわね」

おや? もしかしてこれ、言質取れたんじゃない?

"あの子"も今は旅を終えて、あの街に落ち着いてるし。

このチャンスを逃す手はない……。よし!

「任せて。私の友達にコンテスト経験者がいるんだ。
ティナちゃんのために、最ッ高のステージ用意してもらえないか頼んでみるから!」

「えっ、ステージって……? ちょっ、ちょっとユイ!?」

ティナちゃんに碧雅たちを任せ、グランドレイクの総合受付に駆け込む。

テレビ電話を借りる許可をもらい、私はすぐさま"あの子"へと電話を掛けた。


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