01

「やっと着いた、カロス地方ー!」

青空の広がる晴天の下、私はカロス地方の大地を踏みしめた。

「思ったより暑いね。アイス食べたい」

「兄ちゃん飛行機の中でもアイス食べてたろー?」

「うるさいな……。主食なんだから1日3個は当然でしょ?」

「はいはい、2人ともケンカしない。せっかくカロスに旅行に来てるんだから、楽しまなきゃ損でしょ?」

そう。私たちは今、旅行でカロス地方に来ている。

シンオウでたまたま読んだ旅行雑誌にカロス地方が特集されていて、特にこのミアレシティに興味を持った私は息抜きも兼ねて現地を訪れたのだ。

雑誌に書かれていた通りとてもオシャレな街で、見る物全てがキラキラと輝いて見える。

「ねえ、あの建物何だろう?」

「僕らに聞いて分かると思う?」

「でっかい塔だなー」

街の(たぶん)中心にそびえるタワーを遠目に見ながら周囲を散策する。

この街はカフェが多いらしく、どこを歩いていてもコーヒーの香ばしい香りが漂ってくる。

何か甘いもの食べたいなぁ……。

「ん? なぁなぁ姉ちゃん、何か美味そうな匂いがする!」

「美味そうな匂い?」

紅眞に言われてスンスンと空気を嗅いでみるけど、それらしい匂いはしない。

「そんな匂いしないよ?」

「これ、焼き菓子の匂いじゃない?」

碧雅も"美味そうな匂い"をキャッチしたみたい。

ポケモンの嗅覚ってレーダーか何かなの?

空港でもらったマップを手に歩いていくと店頭販売の台車があった。

匂いはその台車から漂っていたらしく、濃厚そうなバターの香りがふわりと鼻腔をくすぐる。

「あ、ここみたいだね。……ミアレシティ名物・ミアレガレットだって!」

「へー、美味そうだな! 姉ちゃん、俺これ食べたい!」

「そうだね、せっかくだし買おうか。碧雅も食べる?」

「僕はいい」

碧雅って焼き菓子系はあんまり食べないよね。特に焼きたて。

「すみませーん、ミアレガレット2個ください」

「ごめんなさい、今日はもう売り切れなんです」

「ええっ!? そんなぁ……」

お店の人が言うにはミアレシティでも人気No.1のスイーツで、ほぼ毎日完売御礼なんだそうだ。

「ミアレガレット、食べたかったなー……」

「残念だけど仕方ないね。今回は縁が無かったんだよ……」

「2人とも未練がましいよ、みっともない」

碧雅の毒舌がグッサリと刺さる。

未練タラタラのままじゃダメなのは分かってるけど、食べてみたかったなぁ……。

そうため息をついた時だった。


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