11

ディナーの後はお風呂に入って、ネグリジェに着替えてベッドに入る。

(今日は色々あったなぁ……)

1日の流れを思い返していたところで、コンコンと控えめなノックの音が聞こえる。

返事をして入室を促すと、"失礼いたします"と言ってフユカが部屋へ入ってきた。

サービスワゴンにはティーセットが乗っている。

「お嬢様、ハーブティーをお持ちいたしました。よろしければお召し上がりになりませんか?」

「良いの? じゃあお願いしようかな」

「かしこまりました」

カチャカチャというティーカップの音と、そこへ注がれるハーブティーの音が静かに響く。

フユカの入れてくれたハーブティーを1口飲むと、肩の力が抜けていく気がした。

「これ、何てハーブティー?」

「ローズヒップでございます。疲労回復と美肌に効果があるとされております。
お味はいかがでしょうか?」

「うん、美味しいよ。だけど……ちょっと酸味が強いかな」

「左様ですか。少々失礼いたします」

フユカはティーカップを受け取ると、何かのビンを手に取ってスプーンで掬う。

そしてそれをカップに入れて軽く掻き混ぜた。

「甘いミツを少量入れて見ました。先程よりは飲みやすくなっているかと」

どうぞと言われて、再びローズヒップティーを1口。

程良い酸味を残しつつ、甘さもしつこくない。うん……これなら飲みやすいかも。

「ホントだ、美味しい!」

「それはよろしゅうございました。
ではお嬢様、お次はスキンケアをお手伝いいたします」

「へっ……?」

フユカが大きめなコスメポーチ(たぶん私物)を取り出し、サービスワゴンに色々と並べていく。

なんか、どれも高そうなやつばっかじゃない!?

「それフユカの私物でしょ!? わ、私が使わせてもらうなんて悪いよ!」

「お気になさらず。これらのスキンケア用品は知人が毎月送ってくるものでして。
気持ちは嬉しいのですが、その……消費が追い付かないのです。
"無理して送らなくても良い"と伝えてはいるのですが……」

困ったように笑うフユカの顔を見て、私にも心当たりのある人物が1人。確かに"あの人"ならやりそうだなぁ……。

スキンケアとかメイクとかすごく詳しそうだもんね。もし今度会うことがあったら、色々聞いてみようかな。

買えるかどうかは別としても、ティナちゃんに教えてあげたいし。

(それに……)

高級コスメなんて滅多に使えるものじゃないから、実のところすごく興味はある。

フユカが良いって言ってくれてるんだし、今回は甘えさせてもらおうかな。

「……ありがとうね、フユカ。じゃあ今日だけ借りても良いかな?」

「えぇ、もちろん。どうぞ遠慮なくお使いください」

化粧水、フェイスパック、美容液、乳液、保湿ジェルと、順番に渡してくれるコスメを手に取って肌に馴染ませていく。

全てのスキンケアが終わる頃には、私の肌はプルップルのモッチモチになっていた。高級コスメってすごい……。

「ではお嬢様、私はこれで。どうぞ良い夢を」

「うん……色々ありがとう、フユカ。お休み」

「はい、お休みなさいませ」

パタンと静かに扉が閉められ、大きな窓ガラスからは綺麗な月の光が差し込む。

フカフカのベッドで眠りながら、とても楽しい夢を見たような気がした。


[*prev] [next#]






TOP
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -