03
「マスター、ジョーイさんからお手紙を預かってきましたよ」
「えっ、私に手紙? 誰からだろ?」
所変わって、シンオウ地方ーー。
ノモセシティに滞在している私の元に、1通の手紙が届けられた。
差出人はカロスにいるフユカで、トリコロール柄の縁取りがオシャレな便箋だ。
《−−ユイへ。
久しぶり! 元気にしてる? 電話でも良かったんだけど、渡したい物があって手紙を書きました。
下に書いてある日時に、レオンハルト邸でちょっとしたイベントをするつもりです。
内容は当日までナイショにしておきたいからココには書けないけど、もし都合が良ければ遊びに来ませんか?
良い返事を期待して待ってます! フユカ》
彼女らしさが伺える可愛らしい文字を読んでいると、久しぶりにフユカに会いたくなってきた。
しかも便箋の中には、カロス行きのチケットも入っている。
レオンハルト邸でイベントかぁ。なんか楽しそう!
「ただいまー」
「おや、ご主人。その手紙はどうしたんだい?」
あ、買い物に行ってた紅眞と璃珀が帰ってきた。2人の視線は私の持っている手紙に向けられている。
"お茶が入りましたよ"と紅茶を持ってきてくれた緋翠も交えて、手紙に書かれていた内容を話した。
「……なるほど、フユカ様からのお手紙だったのですね」
「へぇー、なんか楽しそうだな!」
「特に急ぎや重要なスケジュールは無いし、良いんじゃないかな。俺たちもここ最近は色々あったから、良い息抜きになると思うよ」
「だよね! よーし、そうと決まれば早速連絡しなきゃ!」
「うるさいぞ、ちんちくりん。廊下まで声が丸聞こえだ」
ガチャッと扉が開いて晶と碧雅、白恵が部屋に入ってくる。
呆れたようにため息をつく前者2人とは対象的に、白恵は私に近付いてジッと見つめてきた。
「ユイちゃん、フユカちゃんにあいにいくの?」
「えっ? そうだけど、よく分かったね」
「フユカに会いに行くって……。何、いきなり」
「フユカさんからレオンハルト邸でのイベントに招待されてね。
息抜きに行ってみようって話していたところなんだ」
「レオンハルト邸? ……あぁ、森トカゲの実家だとかいう無駄にデカい屋敷か」
碧雅も晶も微かに表情が和らぐ辺り、満更でもないんだろう。
……でも晶は白刃君とバトルするチャンスが来たって思ってそうな気はするな。
ともあれ異議を唱える子はいないし、何だかんだ楽しみにしてるみたい。
「……あ。でもユイちゃん、きをつけて」
「気を付けてって……どういうこと?」
「ごしゅーしょーさま?」
「何が!?」
私に向かって小さな両手を合わせ、合掌するように頭をペコリと下げる。
相変わらず、この子の考えていることはよく分からないな。
「……大丈夫ですよマスター。何かあれば私がお守りしますし、フユカ様がマスターを危険な目に遭わせるとは思えませんから」
「だ、だよね! アハハ……」
さっきの白恵の言葉は気になるけど、ひとまずフユカと連絡を取るためにフロントへ向かった。
私のいなくなった部屋の中で、白恵が"おねつでないようにね"と呟いたことに気が付かないまま−−。
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