02




"はい、こちらレオンハルト邸でございます"

「……えっ?」



通話の繋がった画面に映り込んだのは、なんとエルレイドだった。

確か彼は、シャルルさんのパートナーだったはず……。

"おや、これはフユカ様。お懐かしゅうございます"

「こ、こんにちは……。ポケモンでも電話に出るんだね……」

"えぇ。私やコジョンドはもちろん、キリキザンとフラージェスもそのように訓練を受けておりますので"

「へぇ−。……あ、あのねエルレイド。
いきなりで悪いんだけど、ジョゼフさんかシャルルさんいるかな?」

"申し訳ありませんが、2人はただいま留守にしておりまして……"

エルレイドが眉尻を下げながら小さく微笑む。

うーん、タイミングが悪かったみたい。

「そっかぁ、残念。じゃあまた明日にでも……」

"エルレイド、テレビ電話で何をしているんだ?"

掛け直すね、と言おうとしたところで誰かの声が聞こえてくる。

画面の向こうにいるエルレイドの後ろに、メガネをかけた執事さん……シャルルさんの姿が見えた。

彼はテレビ電話に映る私の姿を見ると、穏やかに微笑みながら恭しく一礼した。い、イケメン過ぎて眩しい……。

"フユカ様、ご機嫌麗しゅうございます。本日はどのようなご要件でしょうか?"

「こんにちは、シャルルさん。今日はお願いがあって電話したんですけど、時間とか大丈夫ですか?」

"大丈夫ですよ。貴女様は当家の大切なお客様。
私どもにできることであれば、何なりとお申し付けください"

「ありがとうございます! 実は……」

私は白刃から聞いた話を掻い摘んでシャルルさんに話す。

すると彼は少し驚いたような表情で、"修行、ですか……"と呟いた。

"以前当家へご滞在なさった際に、ご様子を拝見しておりましたが……。
今の白刃様のままでも問題は無いかと"

「私もそう思うんですけど、本人はどこか納得のいかない部分があるみたいで……。
いつも私のことを優先して自分のことは二の次だから、たまのワガママくらいは叶えてあげたいんです」

"……かしこまりました。私から執事長に相談してみましょう"

「良いんですか!?」

"とはいえ執事のスキルや所作は一朝一夕で身に付くものではありません。
長期間のご指導となりますが、よろしいですか?"

シャルルさんにそう言われて、私は愛用のの手帳を確認する。

……うん、特に重要な用事は無さそう。

「はい、大丈夫だと思います」

"白刃様はとても誠実で忍耐のあるお方とお見受けします。突貫コースでも心配はないでしょう"

「……ん?」

なんかすごいワードが聞こえた気がするけど、聞かなかったことにした。

白刃なら大丈夫だろう……たぶん。

(それにしても、エルレイドを見てるとあの子を思い出すなぁ)

脳裏に過ぎるのはシンオウにいる友達−−ユイの手持ちポケモンの1人。

キルリアの緋翠君はサーナイトとエルレイド、2つの進化の可能性を秘めている。

中性的なイケメン(サーナイト)になるのか、それとも凛々しいイケメン(エルレイド)になるのか。実のところ密かに楽しみにしてるんだよね。

(ユイもトレーナーとして着実に成長していってるもんね)

初めて一緒にタッグバトルした時は"指示を出すだけで精一杯"って感じだったのに、最近では余裕を見せるシーンも少しずつ増えてきている。

ソノオタウンでダブルバトルした時なんて緋翠君と晶君のペアに負けそうになったし、アクシデントで人格が入れ替わった時のバトルではうちの子たちと良い連携が取れてたように思う。

(碧雅君たちと一緒に色々努力してるんだろうな)

"先輩トレーナー"ってほど偉そうなことを言える立場じゃないけど……。

それでも、頑張ってる友達のために何かしてあげたいという気持ちはあった。

(……! よし、せっかくだ!)

我ながら良いことを思い付いた気がする。

そうと決まれば"善は急げ"、"思い立ったが吉日"というやつだ。

シャルルさんはすごく驚いてたけど、白刃の件と合わせてジョゼフさんに相談すると約束してくれた。


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