07
しばらく待っていると、紅眞と料理ハウスのスタッフが2人分のお皿とコップを運んできた。
お皿にはいかにも辛そうな、真っ赤なポフィンが10個乗っている。
コップに注がれている白いドリンクはモーモーミルクで、まずはこれを飲むように紅眞に言われた。
「ノワキの実を使った辛口ポフィンに、マトマの実10個分の辛味パウダーをふりかけています。
お2人とも、準備はよろしいですか?」
「良いだろう」
「いつでも良いので早くしてください」
「それでは、よーいスタート!」
スタッフがストップウォッチを押すと同時に、私と晶はポフィンを手に取って食べ始める。
その瞬間、口の中を凄まじい刺激が襲った。
確かに紅眞が待ったを掛けたのも分かる気がする。
これは"辛い"というより、"痛い"のレベルだ。……まぁ、食べられるけど。
「ぐ……っ……!? な……何だこれは……!
辛過ぎるにも程があるぞ……!」
「晶、無理はしないで!?」
「み、水……!」
「晶くん、辛味成分は水に溶けないそうだよ」
「呑気に言っている場合か、ロン毛! 雪女、お前も……!?」
「わぁ、ハルちゃんすごーい」
晶が声を掛けてきた時点で、私のお皿からは既に3〜4個が消えている。
それを見て晶の闘争心に火が付いたのか、彼は2個目を口に放り込んだ。
「晶君!? だ、大丈夫なの!?」
「……も、問題ない……。雪女が食べられるのなら僕だって……!」
「で、ですがあまりに無謀です! お腹を壊しますよ!」
「もう諦めなよ。晶がこうなったら止まらないのは分かってるでしょ」
前回会った時にも感じたけど、晶は相当な負けず嫌いみたいだ。
ティナが相手の場合を除いて……だけど。
ゆっくりと一定のペースで食べ進めていく私に対し、晶は休憩を挟みながら2個ずつ頬張って食べていて。その額には大粒の汗が浮かんでいる。
(まさかポケモンと早食い勝負することになるとは思わなかった。
晶には悪いけど……この勝負、勝たせてもらうよ)
お皿に乗っていた最後の1つを手に取り、咀嚼する。
それを飲み込むのと、晶が残りの2つを口にしたのはほぼ同時だった。
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