05
「おっ、来たみたいだぜ。おーいユイ、こっちだ」
「みんなお待たせー!」
「早くしろ、マメ助が"早く食べたい"と言ってうるさい」
「ハルちゃん、すいちゃん、こんにちはー」
料理ハウスの扉をくぐると、窓際の席にユイのポケモンたちが集まっているのが見える。
紅眞に手招きされてそっちへ進むと、碧雅が開口一番"遅い"とユイを睨め付けた。
「迎えに行くだけでどれだけ時間掛かってるの」
「ごめんごめん。木の実買いに行ったら、意外とお客さん多くて」
「でもまぁ、無事に辿り着いたんだから良いじゃないか。
ハルさんたちも久しぶりだね」
璃珀が整った顔でニコリと微笑む。さすが、"世界一美しいポケモン"の名に違わぬルックスだ。
「おかげさまで。そっちも元気そうで良かったよ。
ところで……電話番号のメモをこっそり入れたのは璃珀?」
「……どうだろうね。ご想像にお任せするよ」
これ幸いとあのメモのことを聞いてみたけど、笑って誤魔化されてしまった。
「フン。相変わらず食えぬ男よな、水大蛇。
して、ユイ。脚長軍鶏の隣の女子は誰じゃ?」
翠姫に言われて初めて気が付いたけど、紅眞の隣に水色のエプロンをした女の子が立っている。
その子はゆっくりと私たちに近付くと、ニコリと笑った。
「紹介するね。私の友達のレイナ!
お菓子作りが得意だから、特別講師として呼んだんだ」
「初めまして、レイナです。
ハルたちのことはユイから聞いてるよ。よろしくね」
「……どうも」
「何と……別の女子と知り合えるとは重畳ではないか!
ユイから聞いているのであれば、話は早い。わらわは翠姫、よろしく頼むぞ」
「うん、こちらこそ。
紫闇君はボールの中にいるんだよね? 姿が見えないのはちょっと残念だけど……よろしくね」
『……フン』
レイナというらしい女の子を見て目を輝かせる翠姫とは対照的に、紫闇はボールの中で鼻を鳴らした。
私も素っ気ない態度を取っているにも関わらず、彼女は怒りもしない。
ユイの周りって、みんなこんな感じなの?
「レイナ、ひねくれ化け狐に構わずとも良い。
早速ポフィン作りを始めようではないか」
「そうだね。じゃあ紅眞君はハルについてあげてくれる?
翠姫ちゃんとユイの方は私に任せて」
「おぅ、了解」
「……脚長軍鶏、1つだけ言っておく。
ハルに妙な気を起こしてみよ。竜巻で無様に目を回した後、蔓のムチで手打ちにしてくれる!」
「んな心配しなくても手ぇ出したりしねえって」
私の指導担当を紅眞に任せたのは、私が人間嫌いを考えてなんだろうけど……。
ユイといいレイナといい、とんだお人好しだ。
"はーい、じゃあ始めるよ"というレイナの声に、私と翠姫は目の前の鍋に向かった。
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