04
それから私たちは時間の許す限り遊園地を楽しんだ。
コアルヒーボート(スワンナボートもあった)に乗ったり、観覧車で高所からの景色を楽しんだり。
期間限定で露店を出していたヒウンアイスも食べた。
その後イッシュのポケモンたちがお化け役をしているお化け屋敷にも入ったんだけど……。
相手がポケモンだって分かっていてもやっぱり怖いもので、私と勇人は終始叫びっぱなしだった。
どうやらこのお化け屋敷、"ストレンジャーハウス"という場所をモデルにしているそうで。
イッシュ地方でも屈指の心霊スポットらしい。何でそんな場所モデルにしたの。
あまりにも怖くて……というかポケモンたち(特にゴーストタイプ)の演技が迫真過ぎて、ナオトにしがみついていないとロクに歩けなかったし。
ナオトは何かすごく嬉しそうな顔してたけど、私はそれどころじゃなかった。
あと出口を通った時に見えた、緋色のニマニマ顔が何か悔しかったよ。
「だーっ、やっぱお化け屋敷無理だわ!」
「だったら何で入ったんだ、アンタ」
「進化した今ならいけると思ったんだよ! 幸矢だってエレキブルのトラウマ克服できたんだから、いけると思うだろ!?」
「俺のそれとアンタのそれは別物だろう」
「大体、相手はポケモンなんだ。本物の幽霊でもなし、そこまで怖がる必要もないんじゃないのか?」
「疾風、誰にだって苦手なものの1つや2つはある。
……閉園まで1時間を切っているようだが、どうするレイナ?」
誠士のその声に少し冷静さを取り戻した私は、カバンの中から遊園地のマップを取り出す。
残された時間はそれほど多くないから、何かに乗るにしてもあと1つが限界かな。
「誰か、最後に何か乗りたいとかある?」
「あっ、じゃあ俺ジェットコースター乗りたい!」
「あたしもー!」
「ジェットコースターか……。良いよ、それに乗ったらホテルに戻ろうか。
ナオトもそれで良いよね?」
「! あ、あぁ……うん……良いんじゃないかな」
何かだんだん尻すぼみになっていってるけど、どうしたんだろう?
緋色を始めとする彼のポケモンたちは何か思い当たる節があるみたいで、"あー……"みたいな顔してる気がする。
「天馬と笑理は決定として、あと誰か乗りたい人いる?」
「私は、やめておこうかな……。ここで緋色たちと待ってるよ」
「お前は乗らないのか、ナオト?」
緋色のニマニマ顔、再来。
何かすごく楽しそうに見えるんだけど、気のせいかな?
「……僕も乗るよ、レイナ」
「えっ? だ、大丈夫なの?」
「大丈夫、だと思う……。いや、きっと大丈夫だ……」
「そ、そう……? じゃあ行こうか」
下で待機しているメンバーにカバンを預け、私たちはジェットコースターの乗り場へ向かう。
閉園時間が近づいているのもあるのか並んでいる人は少なく、あっという間に自分たちの乗る番が回ってきた。
コースターに乗り込んで、しっかりとバーを下ろす。
ふと何か暖かいものを感じると思って見てみれば、ナオトが私の二の腕を握っている。
しかもよく見れば、顔が青ざめていた。
「か、顔真っ青だけど本当に大丈夫? まだ間に合うから、降りるって言った方が良いんじゃ……」
"準備OKです! それではみなさん、いってらっしゃーい!"
乗り場のスピーカーから流れる音声を合図に、コースターがゆっくり動き出す。
後ろの座席でキャイキャイと話している天馬と笑理の声をBGMに、上り坂をぐんぐんと上っていく。
それと同時に、ナオトの手の力と顔の青さが増していった。
「ね、ねぇ……もしかしてナオトって、ジェットコースター苦手?」
「い、いや……! だだだ大丈夫だ……っ!?」
あ、いつの間にかコースターが上り坂の頂点まで行っていたみたいだ。
ここまで行ってしまえば、あとはもちろん下りていくだけな訳で……。
強烈な浮遊感を感じたと思った瞬間、ゴーッ! という音と一緒に凄まじいスピードでレーンを走っていった。
「○×※△□☆〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
「ヒャアアアアアァァァァァ!」
隣で響くナオトの叫び声を聞きつつ、自分も思わず叫ぶ。
ジェットコースター乗ってる時って、やっぱり目を瞑っちゃうよね。
後ろからは笑理の"キャアアアアアァァァァ!"ってはしゃぐ声が聞こえるし、天馬に至っては"すごーい! 速―い!"ってエンジョイしてるみたいだ。
……ってことは、天馬って目を開けたまま乗ってるの?
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