07
「出入口でうるせぇですよ。何を騒いでやがるんです?」
背後から聞こえてきた声に振り返ると、そこには独特なヘアスタイルをした男性が歩いてくるところだった。
「……! ネ……ネズ、さん……!?」
シャーリーが驚いた声で彼のものと思わしき名前を呟く。
あの、何と言うか……とてもパンクな方だね?
「ネ、ネズさん! おかえりなさい!」
「取材の仕事、終わったんですね!」
「あまりにもくだらない質問ばかりしてきやがるんで、早々に切り上げましたよ」
心底疲れたというように深いため息をつくネズさん。
再び開かれたその目が、私たちに向けられた。
「ところで君たち、この町へは何をしに?
ジムチャレンジはまだオフシーズンのはずですが……」
「ジ、ジムチャレンジ……?」
「それは、どういったものなのでしょうか?」
「……なるほど、今の発言で大体読めましたよ。
君たちは他の地方からの観光客。それならジムチャレンジを知らないことにも納得が行きます」
さっきのユイと雅の発言だけで観光客って分かったの!?
顔面ペイントの人たちに慕われてるみたいだけど……何者なんだろう、この人?
「……ほ、本物……。本物のネズさんだ……」
「えっ、シャーリー?」
シャーリーがほんの少し後ずさったかと思ったら、静かに私の背後に隠れる。
ポソポソと"本物だ……"とか、"まさか会えるなんて……"とか聞こえてくるけど……。
熱が出たのかと疑いたくなるくらい、顔は真っ赤だった。
……ってことは、この人がさっき言ってたミュージシャン!?
「あ、あの……ネズさんってもしかして、ミュージシャンの?」
「えぇ、まぁ……。一応しがないミュージシャンとジムリーダーでやらせてもらってますよ」
「良かったじゃん、シャーリー! 本人だよ!
この子、ネズさんの大ファンなんです!」
「ま、待ってユイちゃん……! まだ心の準備が……!」
キャイキャイとテンションが上がる私たちを見たネズさんが"ノイジーですね"と呟く。
でもその目はまるで眩しいものを見るように細められ、ほんの少しだけ口角が上がっている気がして。
その後、無事にスパイクタウンを観光することができたのだった。
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