06
空飛ぶタクシーに乗って移動すること数時間。
私たちは目的地の町の近くに下ろされた。
「シャーリーの行きたかった町って、ここ?」
「う、うん……。そのはずなんだけど……」
「誰もいないね……?」
私たちが訪れたのは、ガラル地方の東側にある小さな町……スパイクタウンだった。
でも人通りが無くがらんとしていて、物静かな雰囲気を感じさせる。
「そういえば、シャーリーはどうしてこの町に来てみたかったの?」
「この町のジムリーダーが、ミュージシャンも兼任してて……。私、彼のファンなの。
本人に会いたいとまでは言わないから、町だけでも見に行きたくて……」
「こんな辺鄙な町にジムリーダーがいるのか?」
「こら晶、そういうこと言わない!」
へぇ、この町のジムリーダーってミュージシャンもやってるんだぁ……。
どんな曲を作って歌ってるのか、少し興味あるかも。
「にしても、えらくネオンの光が強いな。目がチカチカするぜ」
「あぁ。姫の宝石のような瞳を痛めてしまうかもしれない。
ですが姫、ご安心ください。こんなこともあろうかと、貴女のためにサングラスを持って来ております」
「お前ってフユカが絡むとアホになるよね」
「……待って。……誰か来る」
蒼真の言葉に町の方を見れば、顔にペイントをした男女がこっちに向かってくる。
良かった。この町の人なら何か教えてくれるかも!
「あの、すみませ……」
「あーハイハイ、それ以上は入らないでくださいねー」
……えっ?
突然ストップを掛けられ、思わず困惑してしまう。
入らないでって、どういうこと?
「私たち、観光に来たんです。長居はしないので、町並みだけでも見ちゃダメですか?」
「ダメダメ! さぁ、帰った帰った!」
目に見える範囲では、何か大事なイベントがあるとかそう言った雰囲気は感じない。
なのに、町にすら入れないなんて。
「何か理由があるんなら、それを聞かせて欲しいところだけど……」
「と、とにかく! 入れないものは入れないの!
運が悪かったと思って諦めてくれる?」
「そ、そんな……」
シャーリーがショックのあまりに言葉を失い、華奢な肩が落ちる。
残念だけど仕方ないか、と諦めて移動しかけた時だった。
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