05
「着いたー! エンジンシティ!」
「すごーい! あれエレベーターかな!?」
「他の地方に来たの初めて……!」
飛行機から降りて、スボミーインというホテルで荷物を置く。
私たちも緑炎たちをボールから出して、自由に街を見て回ることにした。
「シャーリーは"あの子"出してあげないの?」
「出してあげたいけど、身体が大きいから迷惑にならないかな……」
「大丈夫だと思うよ。さっき部屋の窓からイワークいるの見えたし。
シャーリーがどんなポケモン連れてるのか見たいな!」
チラ……とシャーリーが私に視線を向けてきたので、小さく頷いてあげる。
彼女は1つ深呼吸をすると、"あの子"の入っているボールを投げ上げた。
『外だー! ってどこだここ!?』
「ガ、ガチゴラス! 街中で大きな声を出しちゃダメ!」
「「「……」」」
ユイたちが言葉を失って立ち尽くしているのが隣に見えて、思わず私もハラハラしてしまう。
数秒の沈黙を破ったのは、碧雅君だった。
「ゴ、ゴツ……いや良いんじゃない?
好みはそれぞれだし」
「ちょっと碧雅! 失礼だしフォローになってないよ!
カッコ良いポケモンだね。シンオウじゃ見たことないなぁ」
「ガチゴラスか……。悠冬君と同じ、カロスの古代ポケモンだね」
「へぇ、ってことは化石から復元したのか」
碧雅君たちがガチゴラスの印象を順番に口にしていく中で、晶君がわなわなと肩を震わせていた。
「……な……な……!」
「えっ、晶どうしたの?」
晶君はグルッ! とシャーリーへ向き直ると、距離を詰めて彼女の腕を掴む。
シャーリーが小さく息を飲む音が聞こえた気がした。
「リボン女……」
「は、はいっ……!?」
「貴様……あんなに強そうなヤツを連れているなら先に言え!」
「……へっ?」
ガバッ! という字幕でも付きそうな勢いでシャーリーに詰め寄る晶君。
興奮冷めやらずと言った感じがすごく伝わってきて、心做しか目も輝いている気がした。
「おいロン毛、今すぐこの街のバトルフィールドに案内しろ!」
「晶、ストップ! 旅行の目的はバトルじゃなくて観光だからね!」
『……マジカルシャインをご希望ですか、晶?』
「声だけでもドス黒い笑みを浮かべているのが分かるぞ、ひっつき虫」
ひとまずバトルは次の機会に、ということで納得してもらった。
私たちって会う度にバトルしてる気がするし、たまには観光メインなのも良いよね。
「そういえばユイ、観光地はどこに行こうか?
あまり詳しくは決めてなかったよね」
「私は、ルミナスメイズの森に行ってみたいなぁ。
何か神秘的な雰囲気だったし!」
「ご主人、ルミナスメイズの森に住むポケモンのほとんどはフェアリータイプだよ」
「……よし、今のは聞かなかったことにして!」
「あ、あの……。私、前から行ってみたかった町があるんだけど……」
そうだ。今回はあくまで、シャーリーが交流を深めるための旅行。
彼女の行きたい場所を優先させたいと言えば、快く承諾してくれた。
私たちに続きを促され、シャーリーはとある町の名前を呟いた。
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