04
「ど、ドキドキする……。
初対面だし、上手く話せるかな……?」
いよいよ旅行当日。
私はシャーリーと一緒に、ミアレ空港でユイたちを待っていた。
彼女には"私の友達も一緒だよ"って伝えてあったけど、ずっとソワソワしている。
レオンハルト邸を出てから……というか、朝に食堂で会ってからこんな調子だ。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。優しい子たちだから」
「も、もちろんフユカちゃんのお友達を疑うわけじゃないよ。
でも、歳の近い子と話す機会がほとんど無かっ……」
「あっ、見付けた! フユカー!」
少し離れたところからユイと緋翠君の声が聞こえてくる。
シャーリーは肩を思い切り跳ねさせると、テッカニンも顔負けなんじゃないかって速さで私の背後に隠れた。
「ユイ、おはよう! 誘ってくれてホントありがとうね」
「友達なんだから気にしないでよ。……紹介したい子って、その子?」
1歩横にずれて、シャーリーの肩をそっと押す。
「シャーリーっていうんだよ。
レオンハルト邸のメイドさんなんだけど、ユイたちは初対面だったよね」
「シ、シャーリーと申します……。
そ、その……。お誘いいただき……あ、ありがとうございます……」
「こちらこそ初めまして、ユイです!
今日は思い切り楽しもうね! 私のことも気軽に呼んでよ」
「う、うん……。ありがとう……ユイ、ちゃん……」
うんうん、出だしは良い感じだね。
ユイの隣では緋翠君が原型の姿で立っていて、流れるような所作でお辞儀した。
『私はキルリアの緋翠と申します。
シャーリー様、本日はどうぞよろしくお願いします。
フユカ様もお元気そうで何よりです』
「ヒッ……! フェアリー、タイプ……!?」
緋翠君の姿を見た途端、シャーリーの表情が一気に強ばる。
再び私の背後に隠れようとする彼女に、ユイと緋翠君が首を傾げた。
「えっ、どうしたのシャーリー?」
『何か無礼を働いてしまったでしょうか?』
「……あっ」
どんどん顔が青ざめていくシャーリーを見て、私はあることを思い出す。
そうだよ、彼女にとってフェアリータイプはトラウマ案件だった……!
「ごごごごめん、2人とも! シャーリー、フェアリータイプが苦手なんだ」
「えっ、そうなの!? 何かごめんね!
緋翠、悪いけど1回モンスターボールに戻ってくれる?」
『か、かしこまりました!』
緋翠君がボールに戻っていくのと同時に、シャーリーの背中をさすって落ち着かせる。
「……シャーリー、落ち着いた?」
「う、うん……」
「シャーリー、ホントごめん! まさか顔色悪くなるレベルだなんて……!」
「わ、私の方こそごめんなさい……。
先輩たちが連れてる子なら、何とか大丈夫なんだけど……」
エルザさんがフラージェス、クロエさんがプクリン、そしてソフィアさんがペロリーム。
そっか、3匹ともフェアリータイプだもんね。
でもここまで苦手意識が強いなんて、よっぽど小さい頃のことが心の傷になってるんだな……。
「じゃあ、白恵もボールにいてもらった方が良いよね?」
「うん、その方が良いかも。
白恵君と緋翠君には窮屈な思いさせちゃうけど……」
『お気になさらないでください。
私とて、女性を困らせるのは本意ではありませんから』
『ぼくもいいこにしてるね』
「白恵君、もう十分良い子だよ。緋翠君もありがとうね」
シャーリーの顔色が戻ったのを確認して、私たちはガラル地方行きの飛行機に乗り込む。
エンジンシティに着くまでの間、旅行雑誌を見ながら会話に花を咲かせた。
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