10
「お前まさか……ポケモンの言葉が分かるの?」
「えっ? あ、うん……実はそうなんだよね。
普段は気付かれないように気を付けてるつもりなんだけど……」
「ふーん。まぁお前がポケモンと話せようがそうじゃなかろうが、私にはどうでも良いけど」
そういうハルも、今原型の晶と話してたよね? とは言わないでおく。
ちなみに他のみんなはゾロアークという種族が珍しいのか、紫闇君の周りに集まって……というか彼を囲んでいて。
その中央で紫闇君が鬱陶しそうな、何とも言えない表情をしていた。
様子を見るに、晶がバトルを持ち掛けてるのを璃珀と緋翠が宥めてるんだろうな。
そういえば、いつの間にか璃珀も原型に戻っている。
人の目が無いから擬人化を解いても大丈夫って判断したのかな。
そんな璃珀の姿を見ていたハルが、小さく首を傾げる。
"どうしたの"と聞くと、"図鑑で見た姿と違う"って返ってきた。あー、そういうことかぁ。
「璃珀も紫闇君と同じで、色違いの個体なんだ。
それもあって昔は色々苦労したみたい」
「……そう」
こうしてみると紫闇君と翠姫ちゃんって、晶・璃珀の2人と共通点多いな。思った通りだった。
すると紫闇君を囲んでいた輪の中から、白恵が私たちの方に歩いてきた。
「あれ、どうしたの白恵?」
『ユイちゃん、ぼくおなかすいた』
「そういえばそろそろお昼の時間だね。レストランに出発しようか。
……そうだ! 良かったらハルたちもどう?
無料券が2枚あるし、一緒にランチ食べに行こうよ」
「……は?」
ハルの目が僅かに見開かれ、差し出された無料券を凝視する。
翠姫ちゃんは乗り気みたいだし、白恵も一緒に行こうと誘う。
ポケモンのお願いや頼みは無下にできないのか、ハルの手がスルッと無料券を1枚さらっていった。
「えっ、あ、あの……?」
彼女は紫闇君を呼ぶと彼をボールへ戻し、スタスタと歩いていく。
その行動に戸惑っていると、チラリと私たちの方へ振り返った。
「ランチ食べに行くんでしょ? ボーッとしてると置いて行くよ」
「……う、うん! みんな、レストラン行くからボールに戻ってー!」
全員がボールへ戻ったのを確認し、先を歩いているハルを追い掛ける。
彼女の口角が微かに上がっていることに気付かないまま、隣に並んでレストランへと向かうのだった。
[*prev] [next#]
TOP