09

「初めまして、お嬢さん。俺はミロカロスの璃珀。
ご主人共々よろしく頼むよ」

「ミロカロス……聞いたことないポケモンだね」

「イッシュには生息していないからね。
こちらの仲間も紹介しよう。まずはグレイシアの碧雅君と、バシャーモの紅眞君」

『……どうも』

『よろしくなー!』

「キルリアの緋翠君とチルタリスの晶君。最後にトゲピーの白恵君だよ」

「緋翠と白恵は昨日会ったよね、こんにちは」

『はい、昨日ぶりと言えば良いでしょうか』

『こんにちは、ハルちゃん』

礼儀正しくお辞儀しながら挨拶する緋翠と、そんな彼の真似をしてお辞儀する白恵。

そんな2人を見たハルの表情が少し和らいだ。

反対に翠姫ちゃんの表情は明らかに曇っている。

『女子なのはユイだけではないか。男に囲まれて過ごすなどおぞましい』

『何だ、このこまっしゃくれた女は』

『口を慎め、綿毛鳥!
ユイもおる手前、蔓のムチが飛ばぬだけありがたく思うが良い!』

「ちょっと晶、やめてやめて!」

「翠姫、攻撃しちゃダメだよ」

晶と翠姫ちゃんの間に入り、何とか晶を宥める。

ハルも翠姫ちゃんを何とか落ち着かせたところだった。

というか碧雅、さっきの"綿毛鳥"に笑い堪えてるでしょ。

「翠姫ちゃん、前のトレーナーに捨てられた経験があって男嫌いなんだって。だから優しくしてあげてね」

『……フン』

もぅ、晶の憎まれ口も相変わらずだなぁ。

でも翠姫ちゃんの過去が自分に重なったのか、渋々ではあるけど口をつぐんでくれた。

「君が人間不信のチルタリスか……。
晶、だっけ? 私も人間嫌いだから、その気持ちは少し分かるよ」

『? 貴様も人間だろうに人間嫌いなのか?
おかしなことを言うな、雪女』

「ゆ、雪女……」

出たよ、晶の"失礼なあだ名シリーズ"。しかも今度はハルたちバージョン。

でも確かに、彼女を何かに例えるなら雪だと思う。

クールな性格だし一見冷たい人に見えるけど、ポケモンに対しては包み込むような暖かさを感じるから。

私は入ったことないけど、かまくらの中は温かいって聞くしね。人間相手だとブリザードになる……のかも。

「この見た目のせいで散々いじめられてきたからね。
暴言や暴力は日常茶飯事だったし、味方なんて"死んだ彼"以外にいなかった。
まぁそういうわけで、人間に虐げられる苦しさや辛さは分かるつもりだよ」

「……」

ハルの雰囲気から他の人に対する警戒心は感じてたけど、想像してたものよりずっと深刻だった。

心の支えだったらしい"彼"を喪った後、彼女はどんな生活を強いられてきたんだろう。

『そう、か……。雪女、さっきの非礼は詫びる。
その……すまなかった』

「あの晶が自分から謝った!?」

『おいおい、明日大雨になるんじゃねぇか!?』

『吹き飛ばされたいようだな、ちんちくりんにトサカ頭』

「『すみませんでした』」

吹き飛ばされたくはないので、ひとまず紅眞と一緒になって頭を下げる。

そんな私たちの様子を見ていたハルが、"お前……"と驚いたような声音で呟いた。


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